行政文書が捏造呼ばわりされる国 アーキビストを生かしたくても
記者コラム「多事奏論」 岡崎明子
森友学園をめぐる決裁文書の改ざんや自衛隊のイラク日報の隠蔽(いんぺい)が問題となった2017年、同僚とともに、加計学園の獣医学部新設問題について取材していた。
「総理のご意向」文書を始め、さまざまな行政文書を読み解きながらの調査報道だった。そこで助けてもらったのが、膨大な文書の価値を見極め、管理・保存する専門家の「アーキビスト」だった。「この文書の改行や句読点の打ち方から、この文書の原案となったことは明らか」など、目からうろこが落ちる指摘ばかりだった。
アーキビストが専門職として確立している欧米に比べ、日本ではその存在さえほとんど知られていない。国立公文書館は3年前から人材育成に乗り出し、館長が審査する認証制度を設けた。これまでに認証されたアーキビストは、281人にのぼる。
彼らはどこにいるのか。実態調査によると、公文書館などに勤める人が66%、博物館、資料館が16%と続くが、行政機関に勤める人は地方もふくめ5%にも満たない。公表されている名簿を見ても、省庁に所属している人は数人にとどまる。
政府は18年7月の閣僚会議で、公文書管理の専門知識を持つ職員を内閣府から各省庁に派遣する仕組みを広げるとした。この約束はどうなったのか、内閣府に尋ねた。
「各省庁に1~2時間派遣し…
- 【視点】
日本の行政の信頼を担保する「文書主義」が危うくなっています。御厨貴・東大名誉教授が令和の時代に取り組むべき課題として「公文書管理」を挙げたのは、その危機意識の表れでしょう。 今回の「放送法文書」や加計学園問題の「総理のご意向」文書が作成さ