第2回中国に芽吹き始めていた多様性、だが… 彼女たちは白紙を手に取った

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北京=高田正幸
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 休みの日にはよくカフェに行き、夜にはバーに集まってビールを飲んだ。部屋には本が積み重なるのもみんな、似ていた。北京の古い街並みが残る「胡同(フートン)」で開かれるちょっとした展覧会を見ることが好きだった。そして、社会問題をよく議論した。

 けれど、中国の政治を変えてやろうなんて考えていたわけではない。

 「消されたくない」と語る動画を残し、騒動挑発容疑で逮捕された曹芷馨さん(26)は、昨年11月27日に北京であった「白紙運動」に友人たちと参加していた。関係者によると、少なくともほかに3人の友人が同容疑で逮捕されている。

 親しい人たちによると、いずれも20代後半の4人の女性たちだ。出身地も卒業した学校も違っていたが、共通点は多かった。いまの社会に、息苦しさを感じていた点も。

【連載】消されたくない 中国「白紙世代」の叫び

 昨年11月、中国各地で「白紙運動」と呼ばれる抗議活動が起きました。中国では極めてまれなデモの中心にいたのは、若者たちです。彼らはなぜ、白い紙を手に集まったのでしょうか。その後に待っていた運命は。関係者への取材から探ります。

 中国の都会は家賃や教育費がはね上がっている。よりよい暮らしを求める競争は激しい。「996」などという流行語も生まれた。午前9時から午後9時まで週6日間、働くことだ。一方で、結婚や出産を重要視する中国の伝統的観念も残ったままだ。

 そうした社会のあり方に疑問を感じていたのが、彼女たちだった。

 私たちは、買いたたかれている。

 例えば、逮捕された一人、フリーライターの李思琪さん(27)は、理想通りに生きていくことの難しさをエッセーにつづっていた。昨年6月、中国が「ゼロコロナ」政策のまっただなかにあった時だ。

中国の若者たちが胸に抱える、ある違和感

 英ロンドンの大学院に留学し…

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    江藤名保子
    (学習院大学法学部教授=現代中国政治)
    2023年3月29日13時5分 投稿
    【解説】

    日本にいても社会の閉塞感を感じることはありますが、中国で「表現の自由」を求めるときに立ちはだかる壁は、桁違いに高く険しいです。意図的でなくとも虎の尾を踏めば拘束され、その後も監視され続けます。香港の民主活動家たちの現状を見れば、「白紙運動」

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