東芝の旧経営陣5人に計3億円の賠償命令 不正会計問題で東京地裁
東芝で2015年に発覚した不正会計問題で、同社や株主が旧経営陣15人に、同社への損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(朝倉佳秀裁判長)は28日、佐々木則夫、田中久雄の両元社長ら5人に計3億860万円の支払いを命じる判決を言い渡した。経営が混乱する発端となった不正会計問題で、旧経営陣の個人責任を認めた判決は初めて。
他の3人はいずれも元副社長で、財務グループ担当だった久保誠氏、インフラ事業グループ担当だった北村秀夫氏と真崎俊雄氏。
判決は、東芝が国内外でのインフラ事業3件で、適切な損失引当金を計上しないなど、会計基準に照らして違法な会計処理をしていた、と認めた。
「是正義務を怠った」
当時の社長や担当副社長だった5人は「違法と認識できたのに、中止、是正させる義務を怠った」と判断。久保氏については1件で「引当金の先送りを提案した」、田中氏は2件で「違法処理を助長する指示をした」と認定した。
そのうえで、東芝が金融商品取引法違反(有価証券報告書などの虚偽記載)で金融庁から納付命令を受けた約74億円の課徴金や、東京証券取引所などに支払った違約金などの一部について、5人に賠償責任があるとした。
一方、パソコン事業や映像機器事業で行われた利益の水増しなどについては、違法とは認められないか、事実関係を認める証拠が足りないと判断した。東芝はパソコン事業での処理に関わったとして故・西田厚聡(あつとし)元社長にも賠償を求めていたが、地裁は退けた。
一連の裁判では、東芝が西田、佐々木、田中、久保の4氏と、村岡富美雄元副社長の計5人を提訴。個人株主が他の歴代幹部10人に株主代表訴訟を起こし、合わせて審理された。
東芝は「今後の対応は判決内容を精査して決める」とのコメントを出した。株主の代理人を務めた「株主の権利弁護団」の金啓彦弁護士は「株主の役割は果たせたと感じている。認められなかった被告への対応は、判決内容を確認して検討する」とした。
この問題で証券取引等監視委員会は歴代3社長の刑事告発も検討したが、東京地検が「立件は困難」との見方を伝え、告発は見送られた。(田中恭太)
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