前田悠伍に負けたくない 大阪桐蔭の南、無失点に抑え「ほっとした」
(28日、第95回記念選抜高校野球大会3回戦 大阪桐蔭1-0秋田・能代松陽)
七回表。2死二、三塁のピンチを迎えた大阪桐蔭の南恒誠投手(3年)は、右打者のインコースに渾身(こんしん)の直球を投げ込んだ。フライが右翼手のグラブに収まり、無失点に。直後の攻撃で味方が1点を奪い、これが決勝点になった。
この日の先発登板は、試合前日の宿舎で西谷浩一監督から告げられた。「待ってました! 思い切ってやろう」と意気込んだ。
兵庫県出身の南投手は4人兄弟の末っ子。兄3人全員が高校野球を経験した。
4歳年上の瑛斗さんは明石商(兵庫)の投手で、4強入りした2019年の第91回選抜大会で活躍した。
南投手の売りは186センチの長身から投げ下ろす直球だ。昨秋の近畿地区高校野球大会では最速145キロを記録。変化球もカーブやチェンジアップと多彩だ。
2年生だった昨年の選抜大会準々決勝の市和歌山戦では、3番手として登板し、「他の球場にはないような、のまれるような雰囲気」を感じたが、1回を無失点に抑えた。
それから1年が経ち、石田寿也投手コーチが「間違いなく右のエースです」と呼ぶまでに成長した。
そんな南投手が最も意識するのは、この試合で継投したエースの前田悠伍投手(3年)の存在だ。
同級生ながら尊敬する投手が近くにいるのは、「刺激になる」という。
ただ同じ投手として思うところもある。「まわりは今年の大阪桐蔭を『前田のチーム』と言うかもしれない。けど、投手としてはライバル。マウンド上では負けたくない」
この日の南投手は、八回途中まで無失点に抑える好投を見せた。試合中は「ゆるみを出したら隙になる」と表情を崩さなかったが、校歌を歌い終わると「ほっとした。そして最高でした」と笑顔がはじけた。
次戦に向けて、「粘り強い野球をやるには投手が中心になってくる。目の前の一勝を全員で取りにいくため、しっかり準備したい」と気を引き締め直した。(岡純太郎)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。