他人の体は未知の大陸 上野千鶴子さんが性を学んだモア・リポート

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机美鈴 阿久沢悦子
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 セックス、性欲、マスターベーション、そして中絶や性暴力も。5千人を超える女性たちが雑誌「MORE」のアンケートで自分の性を赤裸々につづりました。「モア・リポート」から43年、女性たちの性はどう変わったのでしょうか。調査を手がけた編集者の小形桜子さん、リポートの意義は色あせないと語る社会学者の上野千鶴子さん、それぞれに聞きました。(机美鈴、阿久沢悦子)

モア・リポートとは

集英社の雑誌「MORE」が行う女性の性に関する読者アンケートおよびルポ。具体的な声と全体の傾向を誌上で紹介、3度にわたり書籍化され、話題を呼んだ。現在もアンケートと記事は誌面やウェブで継続している。https://more.hpplus.jp/lifestyle/morereport/別ウインドウで開きます

 ◆「モア・リポート」を企画したフリー編集者の小形桜子さん(79)は1980年の初回から98年まで3回の調査を担当しました。手書きでびっしりと書かれた回答に圧倒され、「語りたいことだったんだ」と実感したそうです。

 米国で76年に発表された「ハイト・リポート」の率直な言葉に衝撃を受け、日本版を企画しました。当時、ミニコミ誌などで性を語る試みはありましたが、一般誌は例がなかった。77年創刊の「MORE」は自立した女性を読者像に掲げ、媒体としてふさわしいと思いました。当時の発行部数は50万超、アンケートを別刷りで挟み込むのは予算もかかり、編集長に渋られましたが、「大丈夫、絶対にできます」と押し切りました。

 「あなたはオーガズムを得たことがありますか」など、全8ページ計45問もあり、回答が寄せられるかは大きな賭けでした。ヘビースモーカーだった私は願掛けのため、たばこ断ちして臨みました。

7割が「オーガズムのふりをしたことがある」の衝撃

 すると発売から2、3日で封書が郵便室に届き始めた。どの回答も言葉がほとばしるよう。今まで誰からも聞かれなかった、でも話したいことなんだと確信しました。どんな生き方や考え方をしているのか、一人ずつ存在が立ち上がってきて面白かった。回答は5770通に上りました。

後半は、上野千鶴子さんのインタビューです。モア・リポートから多様な方法を「学んだ」という上野さん。最近の状況について「セックスのハードルが下がった」と感じる一方で、その質には疑問を投げかけます。

 とりわけオーガズムの表現が…

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    中塚久美子
    (朝日新聞専門記者=子ども、貧困)
    2023年3月31日19時30分 投稿
    【解説】

    「クンニリングスよりフェラチオの実践率の方が高いですし、結婚すると前戯の時間が短くなることも調査結果からわかっています」 「女性が自分の性を語ったことは、女性の置かれた状況や抱える問題を浮かび上がらせただけでなく、女と男の関係、男性の意識