27年目の膀胱がん 「スーツで働き続けるため」悩み選んだストーマ

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鈴木彩子
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 工場機械のほこり取りから生まれた、おそうじグッズ「ほこりんぼう!」。宮城県気仙沼市のサメ革をつかった復興支援の高級婦人靴。昨秋の竜王戦で、将棋の藤井聡太竜王がおやつに選んだ、どら焼きの皮のフルーツサンド……。

 全国各地で中小企業を支え、技術力とアイデアでヒット商品を仕掛ける小出宗昭さん(63)は、36歳から膀胱(ぼうこう)がんと向き合ってきた。

 「ああ、またか」

 2020年ごろから、がんの様相が変わり始めた。半年おきに再発がみつかり、尿道から内視鏡をいれる手術(TURBT)を繰り返すようになった。

 そして22年7月。いつものように手術後の病理検査の結果を聞きに行くと、がんが「浸潤している」と告げられた。粘膜の下の、筋肉層への浸潤。ステージが一つ、上がったことを意味した。

 膀胱がんは、がんの根が浅く、粘膜にとどまっているうちはステージ1だ。でも、筋肉層まで浸潤すると、転移の危険が一挙に高まる。根治のためには、膀胱を全摘する手術が標準治療になる。

 医師はいくつかの選択肢を示しながら説明をした。膀胱を温存して薬物療法放射線治療をするか、膀胱を全摘する手術をするか。

 全摘する場合、どこから尿を出すかによって2種類の方法がある。手術も、おなかを切る開腹手術と、ロボット支援下で内視鏡を駆使するダビンチ手術の2種類がある……。

 「温存療法はすすめられない」と前置きをしてから、「よく考えて決めてください」と医師は言った。

 「ああきたか」

 どこかの段階で、膀胱全摘手術になることは、以前から知らされていた。覚悟はできていた。でも、「その先」は考えていなかった。

 悩んだ。

「先生ならどうする?」

 仕事上、リサーチは得意だけ…

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