拘置支所停止で弁護士が国提訴 48キロ離れ「接見交通権を侵害」

太田原奈都乃
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 宇部拘置支所(山口県宇部市)での収容業務を停止する決定をしたのは、被告と弁護士が接見する権利の侵害で違法だとして、同市の斎藤隆弘弁護士(52)が決定の取り消しを国に求めて山口地裁に提訴した。25日付。斎藤弁護士によると、拘置支所の停止に関する提訴は全国で初めてという。

 訴状によると、法務省は昨年1月と同3月、宇部拘置支所での収容業務停止を決定し、山口刑務所は同11月、停止時期を今年3月末と決めた。下関拘置支所(下関市)が代替施設となる。

 下関拘置支所は宇部拘置支所から約48キロ離れていることから、斎藤氏は訴状で「遠距離接見を強いられ、被告人と弁護士の接見交通権が著しく制約される」と指摘し、「負担を忌避して国選弁護人の成り手がいなくなる」と訴えた。

 また、2021年に宇部拘置支所の被告の延べ収容人数は2284人で、2155人の下関拘置支所を上回っており「これだけの被収容者がいる拘置支所の収容業務を停止するのは極めて異例」と批判した。

 拘置支所は施設の老朽化や職員配置の合理化などを理由に廃止や収容停止が相次いでいる。法務省によると、全国の拘置支所は03年4月に110あったが、現在は97に減った。日本弁護士連合会は今年2月、「当該施設所在地弁護士会と協議を行い、同意のもとに廃止や収容停止を行うべきだ」と国に要望した。

 宇部拘置支所の収容停止に、県弁護士会は強く反対している。地元の宇部市と山陽小野田市の議会や県議会も、今年に入って収容業務の継続を求める意見書を可決した。

 法務省は提訴について「訴状が届いていないのでコメントを差し控えたい」としている。(太田原奈都乃)

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