反発した両親への心残り 京都・賀茂川の桜に誓う「今度は自分の番」
筋野健太
桜ものがたり2023
子どもの頃、京都・賀茂川沿いを桜色に染める並木をよく1人で眺めていた。家のすぐそばなのに、家族で眺めた記憶は一度も無い。
京都市伏見区の久保田はるみさん(61)は、4、5年前、高齢の父と認知症の母の2人が暮らす実家に定期的に通っていた。
よく転んでは顔や足を痛める母に注意したくても意思疎通ができず、昔から頑固な父は話を聞こうともしない。
考えれば、両親と腹を割って話した記憶がなかった。亭主関白という言葉通り、頑固で気むずかしかった父。小学校の時に京都市の理科コンクールや版画で賞をもらった時も、決して私を褒めることはなかった。そんな父の顔色をいつもうかがっている母のことも疎ましく、何かと反発していた。
両親も私も、あれから年を重ねたが、過ぎた時間が関係に変化をもたらすことはなかった。
掃除や買い物など実家での家事を終えた帰り道、賀茂川沿いに立ち、じっと桜並木を眺めるのが習慣になった。
鮮やかな新緑が次第に濃さを…
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