40年前の私の不倫、書き残して夫は逝った 子どもに開示?処分?

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悩みのるつぼ 相談者(70代女性)

 夫が85歳で亡くなり、遺品整理をしていたら、原稿用紙30枚分の手記が見つかりました。

 40年前、私はパート先の年下社員と1年ほど付き合いがありました。長女と長男は10代前半。夫は子育てに協力的で経済的にも不自由ない生活でしたが、真面目すぎたのが私には物足りなかったのかもしれません。

 当然のことながら発覚し、付き合いは終わることになりました。見つかってしまった相手からの手紙が同封され、手記は私たちの逢瀬(おうせ)の記録、発覚後の夫とのやり取りの内容が、その時々の心情も事細かに、日記風につづられていました。夫には闘病中の実母の看病があったこと、子供たちへの影響を心配し、また私の年老いた実父母に知られたら倒れてしまうかもとの思いから離婚に踏み切れなかったこと……。最後に「この手記は次のどちらか好きなようにして下さい、君に任せます」と書かれています。

 一、読み終えたら処分。

 二、誤りがあれば誠実に修正し、君の好きな時に(君が死を迎えた時でも)子供たちに開示。

 「自分が君の立場であれば、事実を伝え、多感な時期をそんな環境で子育てをしていたことを謝罪するだろう。これにより当時の不可解な夫婦関係も納得してもらえるのではと思う」と記されています。私はどうすれば良いのか、本当に迷っています。上野先生、ご助言ください。

回答者 社会学者・上野千鶴子さん

 ご指名を受けました。まるで一編の小説を読むようなエピソードです。夫の死後、不倫が発覚してとまどう妻、というケースはたくさんありますが、その逆ですか。たとえ40年前とはいえ、配偶者の「裏切り」で傷ついた記憶は終生消えないものでしょう。既婚男女の皆さま、お気をつけあそばせ。

 85歳の夫は死を前にして、それを書き残さずにいられなかったのですね。とはいえ、妻だけが見ることのできる遺品のなかに残したのは、夫の配慮でした。

 あなたは死者から重い宿題を…

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