第2回死んだ息子の精子でかなえた「夢」 社会学者がただす女性の幸福論

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エルサレム=高久潤
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 息子が撃たれて死んだ。

 まだ、20歳だった。

 知らせを受けた日、母は我が子の写真を胸に抱き、問いかけていた。

 「どうして、息子は死ななければならなかったのか。結婚したいし、子どもが欲しいって言っていたのに。私は、どうしたら孫に会えるの?」

 悲しみに打ちひしがれていたその時、母は、確かに息子の声を聞いた、と思った。

 「お母さん、まだ遅くないよ。僕の精子を使って僕の子どもをつくってほしい」

 周囲はもちろん、信じなかった。

 でも、母はあきらめなかった。

【連載】「出生率3.0」は幸せか イスラエルから少子化問題を考える

女性が生涯で産む子どもの数が3.0人と、先進国で最も多いのがイスラエルです。仕事か育児か、で悩むこともないようです。なぜ可能なのか、異次元の対策が必要なほど少子化が進む日本との違いは何か、を探ります。

11年後に待望の孫娘 亡くなった息子にそっくり

 訃報(ふほう)を知らせ、遺…

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    井本直歩子
    (元競泳五輪代表・途上国教育専門家)
    2023年4月1日17時0分 投稿
    【視点】

    ステレオタイプの話をすることは偏見を押し付けたり、広めることになるのでしたくはないのですが、今回のみ、ポリコレを無視して誤解を恐れずに書きます。長く海外でたくさんの国籍の人たちと交わっていると、ユダヤ人のステレオタイプは必ず会話やジョークの

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    遠藤乾
    (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
    2023年4月2日6時48分 投稿
    【視点】

    本記事はイスラエル国内における生殖・再生産のお話し。それは、それ自体で奥深く興味深いが、国ごとの規制の凸凹をつうじて、世界的な問題とも地続きだ。  一時期のグァテマラのように代理母に寛容な国があったり、デンマークのように精子のプロファイリ

連載「出生率3.0」は幸せか イスラエルから少子化問題を考える(全3回)

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