真鍋慧、ポン酢ではなく「広陵のボンズ」 広商4番だった兄超えたい
(29日、第95回記念選抜高校野球大会準々決勝 広島・広陵9―2千葉・専大松戸)
自信がよみがえってきた。
広陵の3番打者、真鍋慧(けいた)は3回戦の海星(長崎)戦で3打数無安打。「力んでいた。次は見返したい」と期するものがあった。
一回2死、カーブを思い切り引っ張って一、二塁間を抜くと、ちゅうちょすることなく一塁を蹴った。しかし、二塁でタッチアウトに。「打球の強さと外野手のポジション(の深さ)で狙ったけど、足が遅かった」と照れた。暴走気味に見えたが、積極性が戻った表れでもあった。
二回1死一、三塁の第2打席はストライクを全部振って中堅左へ、四回2死二塁の第3打席は初球をとらえて中越えへ、連続二塁打をかっ飛ばした。
4打数3安打2打点。「きょうは結構よかった。90点くらい」。顔が晴れた。
根っからの負けず嫌いだ。その原点は兄の存在にある。4学年上の駿(たけと)さんは、2019年夏に広島商が15年ぶり全国選手権に出場したときの主将で4番だった。
兄弟で一緒にお風呂に入るほどの仲よしだが、スポーツではライバル視してきた。
「お兄ちゃんが自分くらいの年のときとどっちが野球がうまい?」と父・隆さんにいつも聞いた。
小学生のときには、兄とランニングに出て、かなうわけもなく、置いていかれて、いじけて家に帰って泣いた。
「一緒の学校に行ったら、お兄ちゃんを超えたことにならない。広商を倒して甲子園に行く」
広陵に進学した理由の一つだ。
189センチ、90キロという堂々たる体格と高校生離れした飛距離で世代屈指のスラッガーになった。高校通算本塁打は51。
大リーグで活躍した同じ左打ちの強打者バリー・ボンズになぞらえて、「広陵のボンズ」とも言われる。
ニックネームをつけたのは中井哲之監督だが、調子が悪くて本来の打撃を見失っているようなときは、「ポン酢」と呼ばれるそうだ。
「そう言われてもへこんだりはしません。厳しく言っていただけるので尊敬してます」
ふっきれたように長打を連ねたこの日、中井監督は言った。
「ようやく真鍋らしいヒットが出た。きょうはポン酢からボンズになりましたね。日替わりではいけないですが」
13安打で9得点。中心打者の復調と呼応するように自慢の強打を発揮して13年ぶりに4強に入った。20年ぶり4度目の春の頂点に向け、チームもぐいっと上向いてきた。(酒瀬川亮介、清水優志)
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