ピロリ菌の感染によって起こる胃がんのリスクは、病気にかかわる特定の遺伝子タイプを生まれつきもつ人では大幅に高まることが、理化学研究所や愛知県がんセンターなどの研究でわかり、30日、論文報告した。特定の遺伝子タイプを生まれつきもつか否かが、ピロリ菌に感染していても、胃がんを発症する人としない人がいる要因の一つである可能性がある。
胃がんは、ピロリ菌に感染していると罹患(りかん)する確率が高まる。一方、一人ひとりが生まれつきもっている遺伝子の違い(バリアント)のうち、胃がんのリスクを高める性質をもつ「病的バリアント」が存在することもわかってきた。
病的バリアント
人々がもつ遺伝子には、個人ごとに少しずつ違いがあり、そのタイプによっては、病気の原因となったり、病気を起こすリスクを高めたりすることがあります。こうしたタイプはかつて「遺伝子異常」などと呼ばれることが少なくありませんでしたが、専門家のあいだでは最近、「病的バリアント」と表現されることが多くなっています。今回の記事でもその用語を用いました。
研究チームは、これまでに国内で蓄積されている胃がん患者約1万2千人、胃がんではない約4万4千人のDNAを解析した。
また、このうち約7千人のデータをもとに、ピロリ菌への感染と病的バリアントの存在が組み合わさったとき、胃がんにかかるリスクがどうなるかなどについて分析した。世界的にも最大規模という。
その結果、胃がんのリスクに関連する九つの遺伝子が明らかになり、遺伝性の乳がんや卵巣がんにかかわるBRCA1、BRCA2遺伝子が含まれていた。胃がん患者全体の2・7%ほどが、いずれかの遺伝子に病的バリアントがあった。
またこの九つの遺伝子のうち、BRCA1、BRCA2を含む四つの遺伝子のいずれかに病的バリアントがある人では、ピロリ菌の感染が加わることで、どの遺伝子にも病的バリアントがなくピロリ菌感染もない人と比べて、胃がんにかかるリスクが22・45倍になることがわかった。
病的バリアントがあっても、ピロリ菌感染がなければ、胃がんリスクは1・68倍にとどまっていた。病的バリアントがなくても、ピロリ菌感染があるとリスクは5・76倍あった。
この四つの遺伝子は、DNAにできた傷を修復する働きにかかわっているとされる。病的バリアントがあると、ピロリ菌によるDNAへの傷害がより強くなるなどして、胃がんを起こす可能性を高めている可能性があるという。
ピロリ菌の除菌は、胃がんの…