高校野球の「謎ルール」がじわり変化 やらされるより、まずは考える
丸刈り、上意下達……。高校野球で当たり前のようにある風景だ。
しかし、なぜそうするのか。理由はあいまいだ。
こうした「謎ルール」を見直す動きが、今春の選抜大会の出場校でも広がっている。
高校野球の「常識」を疑ってみる。慶応(神奈川)の試みだ。
森林貴彦監督(49)は、こう指摘する。「そもそも、高校球児という呼び方はおかしくないか」
なぜ野球だけ「児童」の「児」を使うのか。子ども扱いするから、トップダウンの慣習ができ、自発的に考えられなくなるのではと感じる。
丸刈りにする理由もないから、髪形は自由だ。
練習でも、試合でも、選手に考えさせる。メンタル強化にも重きを置く。
甲子園でも、その成果が出た。21日、夏春連覇をめざす仙台育英との初戦。ピンチでマウンドに集まった選手は「ありがとう」と声をかけあった。
小宅(おやけ)雅己投手(2年)は「気持ちが落ち着いた」。三つのアウトを取ってベンチに戻ると、ベンチでも「ありがとう」と感謝の声が飛び交った。
「ありがとう」は、ミスをした時などに気持ちを切り替える合言葉だ。
脳から心を鍛えるスーパー・ブレーン・トレーニング(SBT)の一環で、1年半前から取り組んでいる。脳科学に基づいており、五輪選手なども採り入れているという。
大村昊澄(そらと)主将(3年)は「ここ一番で、いつも通りのプレーができる」。
仙台育英戦では1点を追う九回、代打の安達英輝選手(3年)が同点の適時打を放った。「状況が整理できていた。緊張しなかった」
延長十回、タイブレークの末に敗れたが、選手は「ありがとう」と声をかけ続けた。
森林監督は言う。「勝利至上主義ではなく、成長至上主義。成長こそが高校野球の価値だ」
選手の自主性を大切にする動…