1200を超える日本食レストランがあり、和食人気の高さで知られるシンガポール。そこでホテルやレストランに日本の食材を卸す事業を手がけているのが伊藤幸治さん(54)だ。海外に出て30年余り。「和食の可能性の高さをますます感じている」と言う。
シンガポールを代表するリゾートホテル、マリーナベイ・サンズに、リゾートワールド・セントーサ。300にのぼる取引先には、そんな有名どころが並ぶ。
伊藤さんが経営する「Livlon(リブロン)」は、野菜や海産物、日本酒などの食品を日本から輸入して配送する企業だ。
いまでこそ幅広い取引先を持つが、2004年に会社を起こしたときには10にも満たなかった。「まわりの人に恵まれたおかげです」。地道な営業と実直な取引で信頼を集めてきた。
もともと海外とは縁がなかった。埼玉県川越市で高校までを過ごした。「ふつうの子どもでした。特に何かに打ち込むということもなかった」。1年の浪人生活を経て東京の大学へ。だが、そこで行き詰まった。
希望の大学ではなかったこともあって授業に身が入らず、自分の居場所を見つけられない。「いま思えば『逃げ』だったのかもしれない。自分にはもっと他にやることがあるんじゃないかと」。親の反対を押し切って半年ほどで退学。アルバイトをしながら進むべき道を探った。
パスポートなし 友人の誘いで駐在員に
シンガポールに食材を輸出す…
- 【視点】
シンガポールで在外研究をしていた際には、日本食がシンガポール人の皆さんに広く普及していることに驚きました。大手スーパーでは焼き芋の出来上がりに合わせて行列ができたり(暑い日の焼き芋、最初は違和感がありましたが美味しいです)、どのショッピング