第17回権力が一人に集中しやすい稽古場、劇作家協会長が感じる問題の構図

有料記事

聞き手・増田愛子
[PR]

 演劇界ではここ数年、演出家によるハラスメントや性暴力を、インターネット上などで訴える動きが相次ぎました。被害者自ら声をあげざるをえない状況になるまで、問題が見過ごされてきた背景には、「結果だけ評価して、つくる過程を重視しない空気」があったのでは――。劇作家・演出家として活動し、2022年に日本劇作家協会会長に就任した瀬戸山美咲さんは、日本の演劇界の構造もふまえて、こう指摘します。

 ――演劇界のハラスメント被害を訴える声が、相次いで上がっています。先日は劇団を主宰する劇作家・演出家の男性から、性行為を強要されたなどとして、劇団員の女性が慰謝料などを求める訴訟を起こしました

 「被害者の方が自ら動かなくてはならない状況になるまで、演劇界が対策を講じてこられなかったことを歯がゆく思います。公演の初日を開けるためには、ハラスメントがあっても『見ないふりをする』。初日を迎えることができれば『色々あったけれど、良かった』となってしまう。結果だけ評価して、つくる過程を重視しない空気が、問題をうやむやにしてきた一因かもしれません」

連載「声をつなげて 文化芸術界から#MeToo」はこちらから

映画界で性暴力やハラスメントの告発が相次いだことを発端に、文化芸術界で「#MeToo」の動きが広がりつつあります。問題の背景に何があるのか、今何ができるのか。声を上げた人、被害者を支え連帯する人たちに聞きました。

 「正直、集団内のことは、外からは分からないことがほとんどです。ただ、こうした問題は最近、急に起きたわけではなく、例えばうわさのレベル、あるいはグレーな言動という形で、周囲の人にも『見えていた』場合も、あるはずです。どのように対応すれば、止めることができていたのか。考えています」

「正解」に近づくように努力、が生まれがち

 ――瀬戸山さんは劇作家としてだけでなく、演出家としても創作に携わっています

 「日本では、私のように劇作と演出両方兼ねる人も多いですし、小劇場では劇団の主宰やプロデューサーを兼ねる場合もある。一人に権力が集中してしまっているんです」

 「稽古場では、その人だけが…

この記事は有料記事です。残り2137文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

連載声をつなげて 文化芸術界から#MeToo(全17回)

この連載の一覧を見る