九回に同点打、「決められる4番に」 仙台育英・斎藤陽は夏を目指す
(29日、第95回記念選抜高校野球大会準々決勝 仙台育英4―5報徳学園)
まさかの展開だった。
2点を追う仙台育英(宮城)は、九回2死まで追い詰められていた。
あとアウト一つの場面。代打の永田一心選手(3年)はフライを打ち上げてしまった。試合終了かと思った瞬間、報徳学園(兵庫)の中堅手が捕りそこねたのだ。その間に一塁走者が生還。1点差に詰め寄った。
なお2死二塁。まだチャンスはある。斎藤陽(ひなた)選手(3年)は「あとは決めるだけ」と打席に入った。
1球目から積極的に振りにいった。ファウル。緊張はしていなかった。「打てる気しかしなかった」。盛り上がる客席の大歓声は遠くに聞こえ、集中しているのが自分でも分かった。
2球目、狙っていた外角のフォークにバットを合わせると、捉えた感触がした。打球は左翼に抜け、土壇場で同点に追いついた。塁上でガッツポーズをして喜んだ。
昨夏の全国制覇の要となった4番打者。長打力より、ミート力。小技も扱える「つなぐ4番」を自認していた。
だが、新チームになると、「決められる4番になりたい」とも口にするようになった。長打力を磨こうと、冬は筋力アップのためのウェートトレーニングに費やしてきた。
この日は4打数3安打1打点。それでも、試合後には「長打が1本も出なかった」と反省を口にした。
「夏にもう一度戻ってきて優勝したい」。夏春連覇を逃した悔しさで、涙があふれた。(武井風花)
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