2安打の苦戦を越えて伸び伸び その大阪桐蔭を倒すのは 高嶋仁の目
智弁和歌山前監督 高嶋仁の目
(31日、第95回記念選抜高校野球大会準決勝 山梨学院―広島・広陵、大阪桐蔭―兵庫・報徳学園)
今大会はここまで投手戦が多いと感じました。
3回戦終了までの28試合、2桁得点が一度もありませんでした。本塁打も3回戦までで8本ですか。やっぱり春先は実戦の機会が少なく、生きた球を打てていない。打撃の仕上がりが遅いですね。
いろいろな投手を打ち崩して出てきている夏の甲子園との違いです。
最近、投手の球種が多くなったことも関係があると思います。ツーシームやカットボール、チェンジアップ……。
そういった変化球に対して、大きく振っては対応できない。ミート主体の打撃になるから、必然的に長打が減るんだと思います。
ただ、準々決勝まで勝ち進み、どのチームもエンジンがかかってきました。勝った4校はいずれも準々決勝で2桁安打を記録しました。
山梨学院はエースの林謙吾投手がいいですね。それほど球速はありませんが、制球がよく、失点がある程度計算できます。
吉田洸二監督(53)は長崎の後輩ですから、気にかけています。清峰(長崎)から山梨学院に移って、甲子園に出てもなかなか勝てず、本人も悩んでいました。これで一つ壁を破ったのではないでしょうか。
広陵は中心打者の真鍋慧(けいた)選手に当たりが戻ってきたのが明るい材料です。準々決勝の専大松戸(千葉)戦で打ったセンターオーバーの二塁打は、ええ角度で飛んでいきましたね。
大阪桐蔭は3回戦、能代松陽(秋田)戦の苦戦を越えたのが大きかった。2安打しか打てず、スリーバントスクイズで挙げた1点で勝ちました。苦しい試合をものにすると硬さも取れ、乗ってきます。準々決勝の東海大菅生(東京)戦は、伸び伸びやっていました。
もし大阪桐蔭が優勝するとしたら、あの能代松陽戦が分岐点になったと言えるでしょう。
2試合続けて延長タイブレークでサヨナラ勝ちした報徳学園も、勢いがあります。昨秋の近畿大会の決勝は大阪桐蔭に0―1で敗れています。前田悠伍投手に抑えられ、決勝点は内野ゴロの間に取られました。
その時より打線が力をつけている。大阪桐蔭を倒すとしたら報徳学園かもしれないと思って見てきたので、対戦が楽しみです。
前田投手の攻略法ですか。
難しいですが、追い込まれる前の甘い球を逃さず打つ。ファウルにせず、一球で仕留めることでしょうね。追い込まれると、あの低めのチェンジアップはやっかいです。
残り3試合。ここまで来たら優勝旗が見えてきます。もちろん優勝は意識しますが、硬くならないように普段通り、伸び伸びできるかどうかが大事です。(前・智弁和歌山監督)
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