人権は「ビュッフェではない」 HRW新代表、日本に期待する根拠は

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聞き手・多鹿ちなみ
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 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)の代表に、ティラナ・ハッサン氏が新たに就任しました。弁護士でアジアにもルーツを持つハッサン氏は、人権は「ビュッフェ」のようなものではないと指摘します。どういう意味なのでしょうか。日本が抱える課題や日本への期待についても聞きました。

 ――これまでも人権擁護に長く取り組まれています。つらい現実に直面することも多いと思いますが、何がハッサンさんを奮い立たせているのでしょうか。

 これまでたくさんの経験をしてきましたが、人権侵害を生き延びた人たちや人権擁護のために活動する人たちから、この仕事を続けるための多くの刺激や意欲をもらってきました。

 私が研究者だったころ、紛争地を訪れ、戦時中にレイプ被害にあったたくさんの女性たちにインタビューしました。そのうちの何人かが、その体験をHRWに伝えることを決めたのです。とてもつらい経験なので、私は「本当に伝えたいの?」と確認しましたが、彼女たちの答えは「イエス」でした。

 世界に発信してほしい、世界に知ってもらい、反応してほしい、と。

 私は常に、人々の話を伝える責任があると感じています。そして証拠とともに、世界によりよい保護のための行動を実際に起こさせるようにする責任があると。

 私たちが日々活動している国々では、正義や説明責任、そして自分たちと他の人たちの権利のために立ち上がり、命をかけて闘っている人たちがいます。ミャンマーでは若者が街頭に出て(クーデターを起こした)国軍に抗議をし、イランの若い女性やアフガニスタンの女子学生も自由への権利を守ろうとしています。

 私が毎朝起きて、この仕事をするという責任は強まっているのです。彼らは諦めない。私たちも諦めない。

人権侵害に苦しんだ実体験

 ――とても多様なバックグラウンドを持っていますね。アジアにもルーツがありますが、人権の概念はアジアの状況と相いれないと指摘する人もいます。これまで、人権に関して認識の違いを実際に体験したことはありますか。

 私はシンガポールで生まれま…

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