能登半島の群発地震が収束傾向か 金沢大教授「引き続き注意は必要」
石川県能登半島の珠洲市周辺で相次いでいる群発地震について、金沢大学の平松良浩教授(地震学)は、今年1月ごろから地殻変動と地震活動が収束傾向にあるとの研究成果を発表した。一方、活動はまだ続いており、引き続き注意が必要だとしている。
能登半島の群発地震は2020年12月ごろから活発化し、21年1月から現在までに震度1以上の地震が約300回発生している。昨年6月19日には、最大震度6弱を観測した。
平松教授は「地震活動と地殻変動が同時に起こっているのが最大の特徴」と指摘。発生要因として、地下から上昇する「流体」の存在を挙げた。
流体は水のような液状のものと考えられている。一説として、流体が太平洋から日本列島の地下に沈み込んでいる海洋プレートなどからしみ出して上昇。地下十数キロのあたりで膨張し、岩盤を押し広げたり、断層のすき間に入り込んだりして、地震を引き起こしている可能性があるという。
今回の研究は21年秋ごろから現地調査を開始し、翌年には文部科学省の科学研究費助成事業として、平松教授を代表に金沢大や東京大、東北大など12機関計24人が参加している。
参加機関の一つ、京都大防災研究所の吉村令慧教授(地球電磁気学)らが中心となり、珠洲市周辺に電磁気を計測する装置を設置。流体に富む「良導域」の存在を確認した。GNSS(全球測位衛星システム)で地殻変動のデータを収集・解析しているほか、流体の起源を探るため、温泉の成分調査を実施してきたという。
この調査について、平松教授は「地殻変動がやや収まりつつある傾向がみられる」と言及。背景には、地下深くからの流体の供給が減少している可能性があるといい、「この傾向がそのまま続くと、地震活動も徐々に落ち着くのではないか」と述べた。
一方、地震は依然として続いている。今年に入ってからも震度1以上が40回ほど発生している。3月29日も未明と昼すぎ、夕方に珠洲市で震度3を観測した。
平松教授は群発地震の特徴について、「最大規模の地震がいつ起こるか分からないことだ」とも指摘。「今後も大きな地震に襲われるかもしれないという注意は必要だ」と呼びかけた。
また、航空写真による地形の調査で、珠洲市沿岸の飯田湾付近において、断層運動などの影響で形成される「変動地形」を発見したことも報告。これまでに知られていない活断層が存在している可能性を示した。
平松教授らは今後、学会や市民向け報告会などでも研究成果を発表する予定という。(小島弘之)
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