2020年11月12日。プロ野球西武ライオンズの野田昇吾(29)は携帯電話が鳴らないことを祈っていた。
翌日から来季に向けた秋季練習が始まろうとしていた。
「秋季練習前日の午後6時までに球団から電話がなければ、戦力外はないと聞いていた」
スポーツPlus
スポーツPlusはオリジナル記事を有料会員の方にメールで先行配信するニュースレターです。今回は4月4日配信分をWEB版でお届けします。
鹿児島実高時代に甲子園に出場し、社会人野球を経てドラフト3位で16年に入団。中継ぎ左腕としてプレーし、日本代表「侍ジャパン」に選出されたこともあったが、プロ5年目は過去最低の3試合の登板にとどまった。
時計の針が午後6時を回った。だが、ほっとしたのもつかの間。15分後、着信があった。
翌日、チームメートが秋季練習に励む傍らで戦力外通告を受けた。
「自分でも残りの野球人生は長くないだろうって思っていた。肩の状態がずっとよくなかったので」
翌月の合同トライアウトを受けたのは「これが引退試合」と区切りをつけたかったからだ。
戦力外になった直後、新たな自分の姿を想像していた。
「好きなことで生きろ」。現役復帰をめざして合同トライアウトに参加していた新庄剛志・現日本ハム監督がくれた言葉も背中を押してくれた。
競艇選手。未知の世界だったが、きっかけはあった。
新人だった16年オフ。チー…
- 【視点】
侍ジャパンまで上り詰めたピッチャーが、元プロ野球選手というプライドを捨てて、ボートレースの世界へ。これ、アスリート版「アンラーン」なんじゃないかって感じました。 アンラーン。英語でunlearn。これまで学んできた知識や常識を手放すこ
…続きを読む