台湾の蔡英文総統が31日から、中米のグアテマラとベリーズを訪問する。両国は、台湾が外交関係を持つ数少ない国の一つ。26日には、中国の働きかけで同じ中米のホンジュラスと断交されたこともあり、台湾としては両国をつなぎとめようと必死だ。今後、中米での「断交ドミノ」が起こる可能性はあるのか。中国・台湾と中南米の関係に詳しい上智大の岸川毅教授(比較政治学)に話を聞いた。
米国を重視していた中米諸国、変化の兆し
――ホンジュラスと台湾の断交をどう見ましたか。
驚きはありませんでした。ホンジュラスのカストロ大統領は昨年1月の就任前から、台湾との断交、中国との国交樹立を訴えていたためです。
それに加えて、蔡氏は今回の中米訪問に合わせて、米国に立ち寄ることが明らかになっていました。蔡氏が訪米する際、中国は必ず「嫌がらせ」のようなことをします。中国は今回、ホンジュラスに働きかけて、断交を「嫌がらせ」の材料に利用したのでしょう。
当然、断交は台湾にとって痛手です。ホンジュラスとは80年以上の外交関係があっただけに、政府や外交関係者にとってはショッキングな出来事だったでしょう。その一方で、台湾社会に与える影響はとても限定的だと感じました。
――なぜでしょうか。
断交の可能性が報じられた際、私は研究で台湾に滞在していたのですが、主要紙や市民の間で蔡政権を責める雰囲気はありませんでした。というのも、ホンジュラスが台湾に対して、援助額の倍増という無理筋な要求をしてきたと市民が理解しているからです。
「金銭外交を続けてまで、外交関係を維持する必要はない」という思いの世論は強く、人々は過大な要求への嫌悪感を募らせていました。
記事後半では、中米諸国が中国に傾いている理由や、「断交ドミノ」が今後も起こる可能性について、岸川教授が解説しています。
――蔡政権が誕生した2016年以降、中米ではパナマ、エルサルバドル、ニカラグア、ホンジュラスが立て続けに台湾と断交しています。
「米国の裏庭」とも呼ばれる中南米ですが、特に中米は歴史的に見ても米国の影響力が強い地域です。最大の貿易相手国であることはもちろん、米国にいる何百万もの移民による母国への送金は、重要な外貨獲得源です。中米諸国は今まで、米国との関係を極端に損なうような政策は取れませんでした。
それにもかかわらず、台湾との断交、中国との国交樹立に傾くケースが相次いでいます。米国が失望すると分かっていながらも、中国との関係強化を有効な「カード」だと見いだしているのです。ホンジュラスはまさにそうでした。
――中米は、なぜ中国に傾いているのでしょうか。
もちろん、中国の「援助マネ…