甲子園で勝つためには? 山梨学院の監督はホームルームを思い出した

三宅範和
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(1日、第95回記念選抜高校野球大会決勝 山梨学院7―3兵庫・報徳学園)

 ベンチでは、笑顔を絶やさない。山梨学院の吉田洸二監督(53)は選手がミスをしても、ニコッと笑い、手をたたいて励ました。

 決勝の舞台でも、変わらなかった。

 「試合中はどんな時も、一番の応援団でいようと思った」

 四回、エース林謙吾(3年)のボークなどで2点の先制を許したが、笑顔で選手を迎え入れた。

 そして、五回。打者10人でつなぎ、5連打と本塁打で7点を挙げて逆転した。山梨県勢初の優勝に導いた。

 2009年に清峰(長崎)を率いて選抜大会を制して以来、2度目の優勝。異なる2校での優勝は、史上4人目だ。

 笑顔を忘れなかったのは、過去の反省からだ。

 清峰から山梨学院に移ったのは、13年。卒業した山梨学院大の系列高校だったのが縁で、請われた。

 県立校の教諭から、恵まれた条件の私立で専任監督になった。春5回(新型コロナで中止になった20年を含む)、夏5回の甲子園出場を重ねた。

 だが、最高で1勝止まりだった。

 昨春の選抜大会では、木更津総合(千葉)に延長十三回、タイブレークの末、1―2で惜敗。昨夏も天理(奈良)に1―2と競り負けた。

 昨年のチームは勝ち上がる自信があった。でも、勝てなかった。

 そんな時、自分が甲子園で采配をふるう映像を見返した。

 「監督がこんな難しい表情をしていては、選手が硬くなるのも当然だ」

 思い出したのが、清峰時代の「ホームルームの延長のような野球」だ。

 「教員として授業を受け持っていた選手もいたし、一緒にわいわい楽しくやっていた」

 原点に戻ろうと決めた。

 3季連続の甲子園となる今春の選抜大会。開幕試合で東北(宮城)との接戦を制した。

 2回戦の氷見(富山)、3回戦の光(山口)はともに県立校。指導者と選手たちが、伸び伸びと野球を楽しむ姿を見た。

 かつて自分が清峰を率いていた時の姿と重なった。「ホームルームの延長のような野球」は、間違っていない。その思いは強くなった。

 3月31日の準決勝。山梨県勢が初の決勝に進み、校歌を聴きながら、涙が流れた。

 そして、決勝。「第二の故郷」と呼ぶ山梨県勢を春夏通じて初の頂点に導いた。

 「10年間、山梨にお世話になって、毎年のように期待を裏切ってきた。今日の優勝で、少しは帳消しにしてもらえたら」

 スタンドの大観衆から拍手が送られると、笑顔を見せた。(三宅範和)

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