見事だった山梨学院 吉田監督、やっと壁を破ったな 高嶋仁の目
智弁和歌山前監督 高嶋仁の目
(1日、第95回記念選抜高校野球大会決勝 山梨学院7―3兵庫・報徳学園)
見事だったですね、山梨学院の五回の集中打。打順が2回り、3回り目に入って、タイミングが合いだしていた。そこで振り回さず、センター中心に打ち返しました。
優勝の原動力はもちろん、エースの林謙吾投手でしょう。6試合をほとんど一人で投げきった。決勝は疲れから体が重くなって厳しいかなと思いましたが、最後まで状態が変わらなかったですね。
疲れると制球が甘くなって、球が中へ中へ入っていくものなんです。それが全くなかった。相当練習を積んできたのでしょう。
吉田洸二監督は長崎の後輩で、気にかけていました。
一昨年、僕が山梨県で講演したときにも、来てくれました。
彼は悩んでいましたね。山梨学院の監督になって、甲子園に何度も出ていますが、甲子園ではなかなか勝てなかった。
それも1―2とか、本来の力を出し切れない負けでした。
「どうやったら勝てるんですか」と聞かれました。年賀状でも、そんなことを書いてきましたね。
「ええ格好したら勝てんよ。いつもの通りやったらええんや」と答えました。
県立高の清峰(長崎)から私学の山梨学院へ移って、「勝たなあかん」というプレッシャーもあったでしょう。
そういう「勝ちたい、勝ちたい」という硬さは選手にも伝染してしまうんですね。
この甲子園は違ったと思うんです。選手たちは一つ勝ったら「もう1試合、甲子園でできる」という喜びにあふれ、伸び伸びやっていたように見えます。
「やっと壁を破ったな、おめでとう」と声をかけてあげたいです。
準優勝した報徳学園の戦いぶりも見事でした。
先制して試合の流れをつかみました。ただ、投手の代え時が少し遅かったように思います。
先発の間木歩投手がつかまりかけたところで、すぐに代えてもよかった。
次の投手が好投するかどうかは分かりません。けれど、継投は遅れたら悔いが残るものです。
それでも、準決勝で大阪桐蔭に逆転勝ちするなど、見事な粘りを見せてくれました。堀柊那捕手の強肩は素晴らしい。同点の八回、矢のような送球で二盗を阻んだ。あれで試合のリズムが変わりました。
投手陣を立て直して、夏に戻ってきてほしいですね。頂点を狙う力はあると思います。(前・智弁和歌山監督)
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