二つの目標で揺れる福島構想 司令塔の福島国際研究教育機構が発足
東京電力福島第一原発事故で被災した福島県浪江町で1日、「福島国際研究教育機構」(F(エフ)―REI(レイ))が開所した。被災地に研究施設を集める「福島イノベーション・コースト構想」の司令塔役を託される。新たな一歩を踏み出した構想は、「人口減の町の再生」と「先端技術の世界的拠点づくり」という二つの目標の間で揺れている。
「F―REIは、福島の、そして東北の復興の夢や希望となる」。1日、機構の開所式であいさつした岸田文雄首相は、そう呼びかけた。小さな仮事務所から始まる機構は、2030年度の完成をめざす。東京ドーム約3個分の広さに、150室の短期滞在宿舎、50の研究・実験室を備える予定だ。今年度中に細かな設計を決める。
政府は機構を「創造的復興の中核拠点」と位置づける。研究テーマは、ロボット▼農林水産業▼エネルギー▼放射線科学・創薬医療・放射線の産業利用▼原子力災害に関するデータや知見の集積・発信の5分野。研究だけでなく、産業化や人材育成にも力を入れ、機構発の起業も奨励する。
「世界に冠たる拠点」をめざすF―REI。ただ、その中身は目標に遠く及ばない場所からスタートする。
機構の出発点でもあるイノベ構想は14年、産業振興に重点を置いた経済産業省の政策として始まった。当時、経産副大臣として主導した赤羽一嘉衆院議員は「先端技術で夢や希望を与えるものをめざした」と振り返る。
しかし、先端技術に重点を置…