強化したメンタル「調子悪くても冷静に」 進化する山梨学院エース林
(1日、第95回記念選抜高校野球大会決勝 山梨学院7-3兵庫・報徳学園)
チーム全員で山梨学院が勝ち取った選抜高校野球大会の初優勝。全6試合に先発し、4試合で完投したエース林謙吾投手は、ひときわ輝く存在だった。
四回、連打と送りバントで1死二、三塁とされ、投球動作の途中で左足がマウンドに引っ掛かってボークをとられるなど2失点。大会初の1イニング複数失点だった。だが、「きっと取り返してくれる」と味方打線を信じて投げ続け、その後は1失点に抑えた。
林投手は「長いイニングを投げられるようになったのは、メンタルの強化ができたから」と自己分析する。多少打たれても、動揺から制球が乱れて四球を連発したり、走者をためて長打を食らったりすることがない。冷静に一定のテンポでの投球を続けるので、守備からのリズムを攻撃につなげやすくなる。
「メンタルの強さ」の真骨頂が、準決勝の広陵(広島)戦だった。広陵打線に毎回の計10安打を浴びながらも一回に先制された1失点のみに抑えて完投した。
昨秋の明治神宮大会では、英明(香川)を相手に五回まで4―0でリードしていながら、六回に1本の安打から動揺。集中打を浴びてこの回6失点し、課題を残していた。
選抜直前の3月に「気付き」があった。大学との練習試合で、「失点すると態度に出て、周りに悪影響を与える」と吉田健人部長に指摘を受けた。それからは「調子が悪くても、冷静に最少失点で切り抜け、反撃を待つ」というように意識改革に努めた。
決勝では、林投手が集中打の口火も切った。2点を追う五回。「点を取られた後だし、甘い球が来たら、打ってやろう」。入った打席で4球目を左越えにはじき返し、二塁打に。
続く伊藤光輝選手の左前適時打で、四球で出た走者に続いて生還し、同点のホームを踏んだ。打線の爆発はさらに続き、バッテリーを組む佐仲大輝選手の本塁打などで、この回一挙7点をあげた。
「同点で良いと思っていたが、思った以上に点が入ってありがたかった」。これに対し進藤天主将は「よく投げている林を助けようと、全員の『後ろにつなげよう』という思いが一つになった」と振り返った。
林投手は「真っすぐで押せるようになったのが収穫」と大会での手応えを語る。「自分が良い投手だと思ったことはないし、成長したい。140キロがコンスタントに出るわけでもないし、変化球では空振りを取ることにこだわりたい」。「進化するエース」は夏に向け貪欲(どんよく)だ。(三宅範和)
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