ベテランの勘をAIが代替、コスト1割削減 名大発ベンチャーが開発
【愛知】名古屋大学発のベンチャー企業が開発した需要予測AI(人工知能)を、足場レンタルの現場で使ったところ、資材購入や運搬のコストを10%削減できた。ベテラン社員の経験や勘に頼っていた業務をAIはどう変えたのか。
名古屋市中村区の足場機材レンタル「ASNOVA」の上田桂司社長は2月の決算発表で、「無駄な資材移動がなくなり稼働率が向上し、好業績につながった」と、需要予測AIの効果を強調した。
このAIは、名大発のAIベンチャー企業「トライエッティング」(同市中区)が開発した。長江祐樹社長は名大工学部で応用工学を専攻し、2016年に創業した。表計算ソフトや販売時点情報管理(POS)で集めたデータをAIが分析して需要を予測するシステムで、プログラミングの知識がなくても使いこなせる。
ASNOVAは昨年4月から試験導入し、12月に本格導入した。足場レンタルは、長さや用途が違う約300種類の資材があり、会社全体で所有する資材は数十万点に及ぶ。これを全国19拠点に配置し、顧客の求めに応じて貸し出す。
上田社長は「足場は工事に必要不可欠で、特に災害復旧では素早い供給が求められる。これまでは、保有量を増やして対応するという考え方だった」と振り返る。
社員の経験や勘が頼りだが、予測が外れることも。不要な機材購入や輸送コストの無駄は小さくはない。上田社長は「AIは過去実績に基づき、誰もが納得できる判断基準を示してくれる」と評価する。
なぜ需要予測AIが成功したのか――。トライエッティングの長江社長は、複雑性が高い場面ほどAIの出番だという。足場レンタルなら、資材の種類や数量、全国にある拠点と現場の位置関係、天候……など判断材料は無数にある。
ほかにもAIが活躍できるビジネス現場は多そうだ。季節変動の影響を受けやすいリゾートホテルなら、レストランの仕入れや人員配置の予測に役立つという。長江社長は「人間が正確で大量のデータを用意してやれば、AIは客観的で適切な答えを出す」と話す。(鈴木裕)
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