強制不妊、兵庫訴訟も国が上告 救済範囲広げた高裁判決に不服
森下裕介
旧優生保護法(旧法、1948~96年)の下で不妊手術を強いられたとして、聴覚障害者の夫婦ら兵庫県の5人が国に損害賠償を求めた訴訟で、国は5日、計4950万円の賠償を命じた二審・大阪高裁判決を不服として、最高裁に上告した。
同種訴訟では、不法行為から20年が過ぎると賠償請求権が消える「除斥期間」を適用するかが主に争われてきた。
2021年の一審・神戸地裁判決は、除斥期間を理由に原告側の請求を棄却した。一方、3月の高裁判決は、①国が旧法を違憲と認める②旧法を違憲とする司法判断が最高裁で確定する――のいずれか早い時期から6カ月は除斥期間が適用されないとする初めての解釈を示し、被害者の救済範囲を広げる判断をした。
原告の鈴木由美さん(67)は記者会見で「苦しい思いをしてきた。私たちは『ごめんなさい』と言って欲しいだけ」と指摘した。厚生労働省は「除斥期間の解釈適用に関して、本件にとどまらない法律上の重大な問題を含んでいることなどから、上訴せざるを得ないとの判断に至った」とコメントした。(森下裕介)