4月5日、米シアトルであった大リーグのエンゼルス対マリナーズ戦。投手として大谷翔平が今季2回目の登板をした試合で、不意にプレーが止まった。
1点を失った直後の一回1死二塁。マウンド上で構えた大谷に向け、ホーバーグ球審が指をさして「違反!」と叫んだ。
理由は、今季から大リーグが導入した「ピッチクロック」だった。この新しいルールでは、投手は原則として、捕手からの返球後、一定の時間内に投球動作へ入らなければならない。塁に走者がいない場合は15秒、いる場合は20秒。違反すれば、自動的に「ボール」がとられてしまう。
打者にも制限が設けられている。残り8秒になる前に打席で構えなければ、自動的に「ストライク」となる。ただ、残り8秒に達する前は、打者が用意できていない状況で投手が投球動作に入った場合は逆に「ボール」となる。大谷はこの規定に違反したと判断され、ボールが宣告されたのだ。
この日、大谷は打者としても新ルールの洗礼を受けた。六回の打席でピッチクロックの残り8秒までに構えなかったとして、ストライクをとられた。
【連載】ファンを野球に連れ戻せ MLB、動き出した改革
野球は「ナショナル・パスタイム(国民的娯楽)」と呼ばれ、米国社会に深く根差してきました。大リーグ(MLB)も、米プロスポーツリーグの中で最も古い歴史と伝統を誇ってきました。その大きな変化の潮流について、背景を探る連載の初回です。
大リーグは新ルールの運用を徹底している。2月25日のオープン戦では、九回裏2死満塁、フルカウントの場面で、打者が構えなかったとして球審が自動的にストライクを宣告し、試合が終了した。前代未聞の幕切れに、客席はブーイングの嵐。テレビの実況中継は「これが2023年の野球だ!」と伝えた。
今季のルール変更は、ピッチクロックの導入だけではない。「大谷シフト」のように、一、二塁間に内野手3人が並ぶような極端な守備態勢が規制される。また、ベースを大きくして塁間の距離も短くする。共通した狙いは、試合のペースを速くし、グラウンド上で選手たちが繰り広げる攻守の「動き」を増やそうとすることだ。
「最近の野球はつまらない」 人気低迷の理由
100年を超える大リーグの歴史でも、これほどのルール変更が同時に行われるのは例がない。「野球を面白くしなければ、大リーグが衰退する」という危機感が広がっているのだ。
MLBで活躍する日本人選手は今回のルール改正をどのように受け止めているのでしょうか。記事後半でブルージェイズ・菊池雄星投手の見方を伝えます。
今年2月、フロリダ州ポート…
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