日本にいる技能実習生の数は約33万人。日本で働いた経験は、その後の人生にどのように役立っているのか。中国やベトナムなどアジア8カ国の元実習生ら約1800人にアンケートをしたスリランカ出身の佐賀大学名誉教授、ラタナーヤカ・ピヤダーサさんに聞いた。
――技能実習法の施行規則には「帰国後、日本で修得した技能を要する業務に従事することが予定されている」という実習生の復職に関わる規定があります。帰国後、日本と同じ業種で働く実習生はどのくらいいるのでしょうか。
非常に少ないです。おそらく全体の2~3%でしょう。日本と実習生の母国とでは職業事情が異なり、日本と同じ仕事が母国で見つからない場合もある。人材と職種のミスマッチが起きています。
例えば介護産業が例に挙げられると思います。アジアの国々はまだ人口が若いうえに、家族で高齢者の面倒をみる傾向にあり、産業が育っていない現状にあります。
――帰国後、同じ業種につかなかった場合、実習生側に罰はあるのでしょうか。
規定は理念的なもので、罰則は特にありません。帰国後の実習生には好きな仕事を選ぶ権利があります。
――なぜ日本政府はこうした復職に関わる規定を設けているのでしょう。
技能実習制度が、新興・途上国の人々の「技能の修得」という国際貢献を目的としているからです。身につけた技能を生かす場がなければ、制度としてつじつまが合わなくなります。だからこそ、政府は「日本で学んだことと全く同じ仕事をしてほしい」と考えているのです。
そもそも、この制度で「技能実習」という言葉が使われているのは、日本政府が外国から単純労働者を受け入れたくないとの立場を取っているからです。
「奴隷」などと強い言葉で批判も受けてきた技能実習制度。ただ、ラタナーヤカさんは「そんな批判を受けるほどの状態ではない」と捉えているといいます。どういうことなのでしょうか。
鍵を握る地域社会
――「技術を学びたい」と思って来日する実習生はどれくらいいるのですか。
実習生の大半は技能を学ぶために日本に来ていません。全体の8割ほどがお金を稼ぐために来日しています。
また、実習生だけでなく、受け入れる企業側も同じです。技能を教えることは目的ではなく、労働力不足の解消がねらいです。
――元実習生らを対象としたアンケートを実施しています。元実習生は日本で得たものとして何を挙げているのでしょうか。
多くの実習生が日本で身につ…
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- 【視点】
働く人、受け入れる事業者側の双方にとって実のある制度にするにはどんな改善案があるのだろうか。ミャンマーで20年以上、日系企業向けの人材育成・派遣事業を手掛けるジェイサット代表の西垣充さんに、この記事を共有した上で見解を聞いてみた。 西
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