私たちの手で選べていますか 山口補選を前に世襲と公募から考える

有料記事衆参補欠選挙2023

山口総局長・松下秀雄
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 「○○議員、電車に乗らずタクシーに乗る」

 そんな大きな見出しの記事が、新聞に載ったことがあった。

 なぜなら、議員はほかに公共交通手段がないとき、あるいは特別な理由があるときのみタクシーを使えるという国会の規定があり、頻繁に利用していたその議員の行為は、規定に反する疑いがあったからだ。

 これはジョークではなく実話である。ただし、日本ではなくスウェーデンの。

 この記事のことを知ったのは、2019年の暮れ、東京にあるスウェーデン大使館での催しだった。

議長が電車に乗り、首相がアイロンをかける国

 映像やスライドをみせながら報告したのは、ジャーナリストクラウディア・ワリンさん。ほかにも、国会議長も電車に乗ること。首相が自分で洗濯し、アイロンをかけていること。国会議員の税引き後の所得は小学校教師の2倍程度であること。地方議員の多くはほかに本業をもっていて、議会から月給をもらっていないことなどを紹介した。

 そしてこういった。

 「政治家は、自分たちが代表する市民と同じように生活しています。政治家にぜいたくや特権を許せば、政治家になるべきではないタイプの人がなりたがる」

 市民の「代表」である政治家は市民と同様に暮らすべきだ――。その発想に目からうろこの思いがした。

 日本の政治家は、市民と同様に暮らしているだろうか。

 国会議員の歳費と期末手当は計2200万円弱。それじたい世界的にみて相当高い水準だ。ほかに使途公開の義務がない調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)が1200万円。会派には立法事務費が議員ひとりあたり780万円支払われる。一方、民間企業で働く人の平均給与は2021年で443万円だ。

 日本の状況と、スウェーデンの話を重ね合わせたとき、こんな問いが浮かぶ。

 厚遇を受けている政治家は、市民の感覚を忘れずにいられるのか?

 私たちの思いを「代表」できるのか?

世襲議員の割合、12カ国中で日本が1位

 「世襲」問題でもやはり、市民感覚が問われてきた。恵まれた環境で育った人に、つましく暮らす庶民の思いがわかるのか、と。

 思い出すのが、カップラーメ…

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