日本の主将は坂本花織 結果だけでなく姿勢も手本な「良いお姉さん」
フィギュアスケートの世界国別対抗戦が13日、東京体育館で幕を開ける。3大会ぶりの頂点を狙う日本チームのキャプテンを任されたのは、坂本花織(シスメックス)だ。
「(年齢が)上から順に回ってきたって感じ」と本人は笑うが、23歳という年齢は今回の日本チームの中でペアの三浦璃来(21=木下グループ)に次ぐ2番目の若さ。チームの中心を担うのにふさわしい理由は、他にある。
世界国別対抗戦(13~16日、東京体育館)はテレビ朝日系の地上波で中継される。テレ朝動画による有料ライブ配信もある。
日本女子初の世界選手権連覇など、積み上げてきた実績が一つ。今季ここに、芯の強さが加わったことも大きい。
苦しいシーズンを過ごしてきた。
優勝候補として挑んだ昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルでは、ショートプログラム(SP)首位発進しながら、フリー6位と失速して総合5位に沈んだ。
それでも、決して下は向かなかった。「この結果を今は受け止めるしかない」と試合直後に語った通り、ここから短期間で立ち直ってみせた。
練習への向き合い方を見直し、走り込みを増やすうちに持ち味のスピードも取り戻した。「変わるためには、意志が大事。これ以上の後悔はしたくないし、苦しい思いをしたくない」と当時の心境を明かす。
わずか2週間後の全日本選手権ではSP、フリーともに1位の完勝で、自身初の連覇達成。GPファイナルからの鮮やかな復活劇だった。
今年3月の世界選手権で披露したフリーは、今の力強さを象徴する演技だった。
予定していた3回転フリップが1回転になる痛恨のミス。だが、続けざまに3回転トーループを跳んで、連続ジャンプにした。
「今までだったらあきらめていたかもしれない。けど、最初のジャンプが失敗しても、2個目を跳べればまだいけるかもって」
予想外の出来事が起きても冷静に対処して頂点をさらう「世界女王」らしい戦いぶりだった。
坂本の滑りは、次世代の参考にもなっている。
今季シニアデビューを果たし、GPファイナル2位に食い込んだ米国の16歳、イザボー・レビトは、「憧れの選手」として坂本の名前を挙げる。
競技面だけではない。「良いお姉さん」と語るのは、同じ中野園子コーチの下で練習に取り組む20歳の三宅咲綺(岡山理科大)だ。
コーチから怒られて落ち込んでいる時には、「大丈夫やで」と声をかけてくれるという。さらに、どんな人にも積極的にあいさつ。そんな姿を見て、三宅は「本当に尊敬している」と何度も繰り返す。トップスケーターとして、周囲から「目標」として見られるようになっても、飾らないのは坂本の大きな魅力だろう。
国別対抗戦はチームメートの応援も見どころの一つ。木原龍一(木下グループ)は選手発表の会見で応援グッズに関する質問に、「坂本花織ちゃんという『鳴り物』がいる」と言って笑いを誘った。
坂本は「自分が『楽しい』って思っている雰囲気をそのまま出せば、良い雰囲気が伝染していく。だから、『明るくしなきゃ』って考えじゃなく、120%を出している感じ。チーム戦だから、一人一人支え合っていきたい」
3大会ぶりの「世界一」へ。坂本は自然体でチームを引っ張る。(藤野隆晃)

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