綾部市観光協会、初のオープンファクトリー開催
高い技術力を持つものづくりのまちの姿を工場見学で知ってもらう「オープンファクトリー」を、京都府綾部市観光協会が3月29日に初めて実施した。子どもたちが対象で、ネジやおまんじゅう、水平器などの製造現場を見て回った。23人が参加し、記者も同行した。
綾部市は人口約3万人ながら、繊維大手のグンゼと精密ネジの日東精工という東証1部上場のトップメーカーが本社や工場を置いている。観光協会はこの特色をいかして、教育旅行や企業研修向けの観光コンテンツとして磨き上げることを目標にオープンファクトリーを企画した。
コロナ禍で実現がやや遅れたが、3月まで放映されたNHKの朝ドラ「舞いあがれ!」劇中でオープンファクトリーが描かれたこともあり、募集定員はあっという間に満員になった。
当日はまずネジ製造の波多野製作所へ。大正14(1925)年に大阪市で歯車メーカーとして創業、昭和19(1944)年に疎開命令を受けて綾部の農村へ移転した。57年ごろ、工場の一部を日東精工のネジ開発研究に提供したことをきっかけに自社でも製造を始めた。綾部のネジ製造「発祥の地」だ。
3代目社長の波多野隆史さん(54)が「1日に作るネジはだいたい500万本。月1億本になります」と説明すると、驚きの声があがった。午前7時半始業で午後4時半終業。従業員は兼業農家が多く、田畑を世話できるよう配慮している。「田植えや稲刈り有給もあります」と波多野社長。
この後、和菓子のおおつき製菓舗を訪問。子どもたちは蒸しまんじゅう作りを体験した。小麦粉を練った生地であんを包み、卵白を塗って蒸し器で8分。見事にふくらんだそれぞれのまんじゅうに、自分で焼き印を押させてもらっていた。
最後は水平器のアカツキ製作所。液体の中に気泡を封じ込めた定規で、水平・垂直を検出する大工さんの必需品だ。
小寺建樹・現社長(42)の曽祖父・傳次郎さんが大正8(1919)年に国産初の製造を大阪市で始めた。戦争で工場が焼け、昭和20(1945)年に綾部に移転。製品は700種類近くあり、年約80万本を製造している日本のトップメーカーだ。
「そんな会社が綾部にあるの、とよく驚かれます」と小寺社長。プラスチックの成形加工や金属部品のプレス、金型製造まで手がける一貫生産体制が強みで「1本からでも作りますよ」。
子どもたちはアルミのフレームにプラスチックの気泡管を取り付ける最終組み立てに挑戦。ネジを回しながら目で見て最後の調整をする工程を体験した。
市観光協会の担当者は「夏休みにもまた子ども向けの企画をしたい。大人向けも検討している」と話している。(大野宏)
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