北海道警の緊急逮捕、札幌地裁が違法認定 きっかけは被害者の説明

平岡春人
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 札幌市で3月、交際相手の女性を殴り、女性宅に立てこもったとして、男性(25)が傷害容疑で緊急逮捕される事件があった。この逮捕手続きについて札幌地裁(井戸俊一裁判長)が、被害女性の承諾を得ないで警察官らが窓を破壊したのは違法だとして、男性の勾留を取り消す決定を出したことがわかった。7日付。

 井戸裁判長が一度、逮捕を適法としたが、今回の決定は弁護人の特別抗告を受けて「再度の考案」をしたとしている。弁護人によると、抗告に対し地裁が自らの判断を取り消すのは極めて異例という。

 弁護人などによると、道警の警察官らは3月29日、被害女性の関係者からの通報を受け、札幌市中央区マンションの被害女性が住む部屋のドアを開け、部屋にいた男性に任意同行を求めた。男性が部屋に立てこもったため、約4時間後、警察官らが窓を割って突入し、男性を緊急逮捕した。女性は室外にいたという。

 男性は女性を殴ったとする傷害容疑で緊急逮捕された後、強制採尿の結果、今月1日に覚醒剤取締法違反(使用)容疑で再逮捕された。

 弁護人は3日、「緊急性がないのに令状を取らずに逮捕した」として、勾留却下を求めて準抗告。井戸裁判長は4日、「罪証隠滅のおそれがあり、被害者の承諾を得て窓を破壊したのは違法ではない」として棄却した。

 その後、弁護人からこの決定を知らされた被害女性が「警察官には自宅に入ることを頼んでいない。窓は絶対割らないでと頼んだ。修理代を請求したいくらいだ」と説明。弁護人がこの説明などに基づき特別抗告した。

 井戸裁判長は女性に事情を聴いたうえで、「被害者の承諾なくドアを開け、窓を破壊したことの違法の程度は重大。承諾の有無という重要な事実関係を糊塗(こと)して緊急逮捕状を請求した」として、自らの決定を取り消した。

 男性について札幌地検は12日、傷害容疑は起訴猶予、覚醒剤取締法違反容疑は嫌疑不十分として不起訴処分とした。

 弁護人は北海道を相手取り国家賠償請求訴訟を起こす方針。道警捜査1課は「コメントは差し控える」としている。(平岡春人)

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