下水汚泥から複合肥料開発 輸入高騰が背景、JA全農岐阜など販売へ
原料の大半を輸入に頼る化学肥料が高騰するなか、JA全農岐阜とJA岐阜中央会は、岐阜市の下水処理場で回収されるリン酸肥料を原料に、新たな複合肥料「エコレクトG066」を開発した。今月末から販売を始める。未利用資源を使うことで、化学肥料の使用量を減らし、コスト削減を図るねらいがある。
植物の成長に欠かせない栄養素は主に窒素、リン、カリウムの3種類。一般的な農業では、日本はこうした肥料を海外からの輸入に依存する。とくにリンは、原料となる天然鉱石が一部の国に偏在し、最近まで約9割を中国から輸入してきた。2021年秋以降、輸入が滞り始め、さらにロシアのウクライナ侵攻により肥料の卸値が高騰している。
岐阜市上下水道事業部は10年から、北部プラント(同市西中島6丁目)でリンの回収事業を始めた。下水汚泥を焼却した灰約2万2800トン(21年度)から、約140トンのリン酸カルシウムを回収し、リン酸肥料「岐阜の大地」として販売してきた。
農家が使用する時は、「岐阜の大地」に窒素やカリウムを補う必要があり、使い勝手が悪く、市は約230トンの在庫を抱えていたという。
今回の「エコレクトG066」は、「岐阜の大地」を活用し、リン酸肥料5%と国内産の鶏ふん燃焼灰肥料10%を混ぜ、そのまま使えるようにした。価格は従来のものに比べて3~5%安く抑えた。農家だけでなく家庭菜園でも使える。
農林水産省が定めた「みどりの食料システム戦略」では、化学肥料の使用量を少なくする目標を掲げ、下水汚泥の活用にも言及していて、それを先取りする形となった。
JA全農岐阜の西村寿文本部長は「下水から回収できるリン酸を有効利用することでコスト削減を図り、輸入に頼らない持続可能な農業をめざしていきたい」と話す。(松永佳伸)