第17回常識覆すアマゾンの雪玉作戦 ウクライナ個人情報はこうして救われた

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編集委員・須藤龍也 同・五十嵐大介
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 ロシアに攻め込まれたウクライナの市民が「奪われる」危機にさらされているのは、命や故郷、財産にとどまらない。その一つが「個人情報」だ。

 爆撃が続くなか、ウクライナからの膨大な個人情報の国外避難は、米アマゾンクラウドサービス事業会社「AWS(Amazon Web Services)」の作戦によって成し遂げられた。

 作戦のカギとなったのは、「スノーボール」と呼ばれるMサイズのスーツケースぐらいの大きさの直方体。ロシア軍が侵攻してきたその日に始まった作戦は、この「雪玉」に例えられる直方体を使ったデジタル時代の固定観念を打ち破るものだった。

作戦は、ピロシキを囲む昼食から始まった

ウクライナとアマゾンが組んで実現した「雪玉作戦」とはーー。関係者の話から、その実態をたどります。

 2022年2月24日、ロンドン。AWS幹部のリアム・マックスウェル氏はウクライナ大使館に向かった。数時間前にロシア軍が同国の首都キーウなどに向けて進軍を始めていた。

 国のデジタル化を進めるウクライナ政府は、21年に政府公式アプリの構築でAWSの支援を受ける覚書を交わしており、両者には頻繁なやりとりがあった。

 大使館でマックスウェル氏を迎え入れたのは、バディム・プリスタイコ駐英大使。本国の外相を務めた経験もある。ちょうど昼食の時間、ウクライナ名物のボルシチを振る舞った。

 その席で、マックスウェル氏は、メモをとる紙を準備して、切り出した。

 「どんなデータを持ち出したいのですか」

 プリスタイコ大使が答える。第一に、選挙や住民投票をする際に欠かせない国民の戸籍情報だ。資産税を管理するための土地の登記簿も必要だ。教育機関のデータ、医療情報、犯罪履歴――。仮にロシア軍の手にわたったら国民に不利益が及ぶ情報は、枚挙にいとまがなかった。

 マックスウェル氏は、優先順に書き出していった。

 問題は、その膨大なデータをどう持ち出すかだ。

 ウクライナではその1週間前…

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