第34回現職急死、長男と元代議士で保守分裂 キーワードは2世 江東区長選
12日に死去した山崎孝明区長(79)の後任を決める東京都江東区長選は、無所属新顔の4人が争う。保守分裂の構図となり、選挙戦のキーワードの一つに「2世」が浮上している。
16日午前。山崎区長の長男で元都議の山崎一輝氏(50)の出陣式は、父への黙禱(もくとう)で始まった。「弔い合戦」「区長への恩返し」「区長の後継者」。自民公認の区議選候補者14人のうち13人が勢ぞろいし、口々に区長への思いを話した。
5選を目指し立候補を表明していた山崎区長は3月末、体調不良を理由に引退し、告示4日前に亡くなった。事務所の看板には急きょ張り替えられた「一輝」の文字。一輝氏は、「50歳と若い山崎かもしれないけれど、江東区に対する思いは誰よりも強い。一緒に江東区の未来を作っていきましょう」と訴えた。
応援の丸川珠代元五輪相は、「自民の推薦を得て江東区長選を戦うのは山崎一輝氏ただ一人」と言った。
山崎氏側が結束をアピールするのには理由がある。
「古い政治体質をこのまま続けていくのか、それとも新しい女性区長と一緒に健全でクリーンな区政を作っていくのか。選択の時が参りました」。元自民衆院議員の木村弥生氏(57)は16日の出陣式で訴えた。
立候補表明は今年1月。街頭活動は4月に入って300回を超えたという。「父は有名だけど、私はまだまだ知名度がない」。地元選出だった父の木村勉・元自民衆院議員は、出陣式で娘のそばに立った。集会に参加し、支援に回る。
木村氏のポスターには自民の野田聖子・前男女共同参画相の顔写真が入る。野田氏は3日に区内で開かれた集会も訪れた。事務所には稲田朋美氏ら自民国会議員の必勝祈願の「ため書き」もある。
2人の2世がそれぞれ自民色を出して争う中、各陣営はもう1人の2世の動きも気にする。
地元で有力な自民衆院議員の柿沢未途氏(52)だ。父は元外相の弘治氏(故人)。未途氏はみんなの党、希望の党などを経て2021年衆院選に無所属で出馬し、東京15区(同区)で自民都連が推した候補を破って当選。追加公認されたが、今も同都連への所属は認められていない。告示の16日、山崎、木村両氏の出陣式のいずれにも未途氏の姿はなかった。
江東区の人口は約53万人で、20年で約16万人増加した。豊洲、有明にはタワーマンションが林立し、選挙活動の難しさが言われる。
共産と社民が支持する訪問介護ヘルパーの芦沢礼子氏(60)は、「市民型選挙」を掲げる。第一声では防災対策や福祉の充実を訴え、「自民党の2世候補には長く続いた江東区政を刷新できない。機会均等、平等原則が守られる江東区を作りたい」と話した。
元国税庁職員の猪野隆氏(58)は21年衆院選に続く挑戦で、子育てや高齢者支援策を主張する。「江東区は山崎家のものでも、木村家のものでも、柿沢家のものでもない。世襲だから悪いということではない。でも、地盤を引き継げる」と話す。(野田枝里子)
江東区長選候補者
芦沢 礼子 60 無新〈共〉〈社〉 介護ヘルパー
猪野 隆 58 無新 〈元〉国税庁職員
山崎 一輝 50 無新〈自〉 〈元〉都議
木村 弥生 57 無新 〈元〉衆院議員
※届け出順。年齢は投票日現在。四角囲み政党は推薦・支持。経歴などは原則として候補者の回答に基づいて掲載しています
東京都江東区長選は現職の死去に伴い実施されますが、統一地方選と同じ日程のため、同様に報じます。

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