工場寝泊まり5年、上海で育てたブランド 家具デザイナー佐々木さん

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上海=井上亮
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 デザイナーという響きからは、多くの人がおしゃれでスマートな仕事を想像するだろう。だが単身で中国・上海に渡り、家具ブランド「IKASAS(イカサ)」をゼロから立ち上げた佐々木章行さん(42)は、海外の製作現場に深く入り込んで学んだ「たたき上げ」だ。

 いまやテーブル、イス、収納棚、ソファなど商品ラインアップを一通り取りそろえ、要望に応じて造作家具にも対応。上海市中心部にある日系デパート伊勢丹に店舗も構える。佐々木さんは「人との出会いに助けられた」と話す。

■伯父が急逝、でも上海に

 JR高尾駅から車で10分ほど離れた東京都八王子市の田園地帯で自然に囲まれて育った。裏山で秘密基地をつくったり、コナラの木を蹴っ飛ばして落ちてきたカブトムシをつかまえたり。わんぱく少年がデザインの世界におぼろげな興味を抱くようになったのは、幼稚園から中学校まで続けた少林寺拳法の練習で、寺に出入りしたのがきっかけだった。静謐(せいひつ)な寺のたたずまいに引かれ、高校時代には京都や奈良の神社仏閣を巡った。大学で建築学科に進んだのは自然の流れだった。

 卒業制作では学科でトップの成績を収め、大学院に進んだ。卒業後は建築設計事務所に入って独立するケースが多く、「自分もそうしようと思っていた」。だが、家具デザイナーの伯父に進路の相談をしたことがきっかけで、子ども用の家具をつくる伯父の会社を手伝うことに。2005年から工場のある上海と日本を行き来して、品質管理や検品にあたった。

 その矢先に伯父が急逝。会社…

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