営業中にAIが「カンペ」 ChatGPT、ビジネスでの活用模索中

ChatGPT

益田暢子 江戸川夏樹 島崎周 本山秀樹
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 人と会話をしているように文章で答えを返す対話型AI(人工知能)「ChatGPTチャットGPT)」。ビジネスのさまざまな場面で活用が始まっている。

店頭にAIの副店長

 チャットGPTを利用したAIが副店長として接客する「透明書店」が東京・蔵前に21日、開店した。

 客が店頭のディスプレーに、「最近どんな本が売れている?」といった質問をすると、蓄積したデータをもとに回答する。

 売り上げデータを元に、書店に置いた方がいい本を選んだり、イベントを考えたりもするという。開発した木佐森慶一さんは「AIの助けで少人数でもビジネスができるようになる」と話す。

 ビジネスの現場で、AIの活用は急速に進みそうだ。

 JR西日本には、1日に約6千件もの電話やメールが寄せられる。列車の運行状況や運賃など、内容は多岐にわたる。

 応対するJR西日本カスタマーリレーションズ案内・忘れ物事業部の林美智課長は「専門知識が必要なので、人材確保が難しい。人だけで対応するのは限界がある」と話す。

 そこで活用を模索するのが、チャットGPTだ。電話やメールの内容を要約し、関係部署に伝えているが、この要約をAIに任せられないか。開発を担う企業「ELYZA(イライザ)」(東京都)とプロジェクトを進めている。

要約にかかる時間は人間の半分以下

 メールで届いたものについては、すでにAIを活用している。人間の半分以下の時間で要約をつくることができるという。「サービス改善に向き合う時間を増やすことができる」と林課長は評価する。

 イライザの担当者は「AIは副操縦士のようなもの。人の隣でサポートしてくれる」と期待する。チャットGPTを使ったシステムの正確性、安全性を高めていくことが課題だ。

 AIの情報量を生かせば、新入社員がベテランのように営業できる。そんなツールを「UKABU」(東京都)が開発した。2年前の発売と同時に、30社が導入したという。

 顧客からの質問を打ち込めば、社内の情報からすぐに最適な回答を出す。丸山隼平代表(42)は「営業中にAIがカンペを出し続けてくれるようなもの」と話す。

 チャットGPTの機能を組み込むことで、設定していないQ&Aでも、回答を示すことができるという。ただ、チャットGPTには誤った回答をしてしまう欠点があり、AIには内容が正しいか判断ができない。「人を支援するために、AIをうまく使うことを考えたい」

旅行の計画も

 消費者の立場からも、チャットGPTは便利な存在になりそうだ。

 オンライン旅行予約サイト大手の米エクスペディア・グループは、チャットGPTを自社アプリに導入した。旅行がしたいと思ったら、対話をしながら旅行の計画を立てられる。

 例えば、興味がある旅先を2カ所挙げると、チャットGPTは、雰囲気やアクティビティーを比較して示す。「ロマンチックなリゾートは」と尋ねれば、瞬時に宿泊先を提案する。

 気に入った旅程を保存し、会員割引や特典を確認したうえで予約もできる。現在は英語だが、日本語でも実用化を検討している。

 英語学習も変化している。米ITベンチャー、スピークイージー・ラボスは、チャットGPTを用いた英会話学習アプリ「スピーク」の日本版を2月にリリースした。会話特化型のアプリで、人間の講師の代わりにAIが相手をする。

 AI講師から与えられる課題に英語で答えれば、AIがユーザーの音声を認識し、評価と改善点の指摘を返す。ユーザーの発言内容に応じてAIの受け答えも変わるため、現実の会話に近い感覚だ。日本代表のヤン・キンジュシェンコさんは、「産業革命以来の大きな革命が起きようとしている」と話す。

 こうしたAIの進化で、英語教師など、人間の仕事に影響が出るとの指摘もある。

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 チャットGPT 米国の人工知能研究所「オープンAI」が開発した、対話に特化したAI(人工知能)。昨年11月から無料で公開され、ソフトウェアに組み込むことができる。ただ、膨大な個人データ収集が個人情報保護法に違反する疑いがあるとして、イタリア国内では使用を一時禁止。米国でも規制案が検討されている。AIをめぐっては、マイクロソフトがAIを使った検索エンジン「Bing」、グーグルが同じく「Bard」を次々に発表。米アマゾンも参入し、競争は激化している。(益田暢子、江戸川夏樹、島崎周、本山秀樹)

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