3Dプリンターで神経再生「成功」 手指損傷の患者に治験 京大病院
京都大病院は24日、有機物を扱うバイオ3Dプリンターを使って、神経を再生する技術の開発に成功したと発表した。医師主導の臨床試験(治験)で、指や手首の末梢(まっしょう)神経を損傷した患者に、作製した神経細胞のかたまりを移植したところ、痛みが和らぎ、知覚神経が回復するなどの効果が確認できたという。
国内では、手指の末梢神経損傷の患者が年1万人ほど出ている。現在の治療は、患者の体の他の部分から健常な神経を移植する「自家神経移植」が主流だ。ただ、神経採取によってしびれや痛みが残ることがある。
人工神経の開発も進められてきたが、細胞成分が乏しいため再生に必要なたんぱく質などが不足し、自家神経移植に比べて治療成績がよくなく、一般に普及していない。
京大病院は再生医療ベンチャーのサイフューズ(東京都港区)と手を組み、バイオ3Dプリンターで神経細胞のかたまりを作製。ラットやイヌでまず試したところ、これまでの人工神経に比べて良好な成績を得られた。
そこで、仕事中に左手の指や手首を刃物で誤って切って5~10ミリほど神経が欠けてしまった30~50代の男性3人を対象に、医師主導の治験を実施。患者のおなかの皮膚にある細胞を培養し3Dプリンターを使って積み重ねて、直径2ミリ、長さ2センチほどの神経細胞のかたまりをつくった。それを患部に移植し、48週間にわたり経過を観察をした。
「指先の感覚が戻った」
その結果、3人の患者は「痛みがかなりよくなり、指先の感覚が普通に戻った」と話し、仕事も元の通りできるようになった。手や指の知覚機能検査や、神経障害の予後評価の成績も正常レベルまで回復していた。副作用や合併症はなかったという。
京大病院とサイフューズは今…
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