歌手・山内惠介さんが振り返る、「何かが足りない毎日」を抜けた瞬間

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渡辺純子
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 演歌歌手の山内惠介さん(39)は、17歳でデビューしたものの、なかなかヒット曲が出なかった。ラジオのリポーターをしながら地方を回り、祭りやスーパー銭湯でマイクを握る日々。がむしゃらに走りながらも、「何かが足りない」と感じていた。

 2009年の夏のこと。福岡県のスーパー銭湯で歌った後、ご飯を食べながらテレビを見ていた。バレリーナを引退する草刈民代さんのドキュメンタリー番組が流れていた。草刈さんが憧れのバレリーナ、マイヤ・プリセツカヤさんをドイツに訪ね、俳優に転向すると伝えると、こう激励された。

 「タミヨ、どこへ行っても、今どうして自分がここにいるのか忘れなければ、怖いものはないのよ」

 思わず箸を止めた。

 「そうだ。自分が今ここにいるのは、いろんな人が支えてくれたから。なのに自分は、それを気にせずに生きてきたかもしれない」

 以来、ステージに上がる前の一瞬、支えてくれた人の顔が思い浮かぶようになった。師匠、スタッフ、家族、ファンの人たち。「自分一人の力でここに立っているわけじゃない」。そう思うと、感謝があふれて自然と力がわいた。

 人や歌との向き合い方も変わった。

 誰と会っても、「なにか意味…

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