【詳報】藤井聡太竜王、1分で休憩を終えた秘密 語った思考コスト

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北野新太 村瀬信也 佐藤圭司
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 渡辺明名人(39)に藤井聡太竜王(20)=王位・叡王・棋王・王将・棋聖と合わせ六冠=が挑戦する第81期将棋名人戦七番勝負の第2局(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛、地元主催・静岡市など)は28日午前、静岡市葵区の料亭「浮月楼」で前日から指し継がれ、対局2日目が始まった。

 渡辺名人はタイトルを防衛しての4連覇を、藤井竜王は史上最年少の名人獲得と史上2人目の七冠を目指すシリーズ。先勝した藤井竜王が連勝を飾れるか、渡辺名人がタイに戻せるかどうかの第2局は藤井竜王の先手で始まり、名人戦らしい重厚な展開のまま1日目を終えた。形勢は互角。残りの持ち時間も大差なし。決戦の2日目となった。

 朝日新聞デジタルでは、将棋界の枠を超えた注目を集める七番勝負の模様をタイムラインで徹底詳報する。

終局後

藤井聡太竜王の考えるコスト  将棋担当・北野新太の目

 28日午後5時、名人戦第2局は2日目の夕休憩を迎えた。

 勝負は佳境に入っているが、形勢は互角で局面は難解だった。渡辺の△2四香に対し、藤井の考慮時間が30分を超えた頃に休憩時刻となった。挑戦者はゆっくりと立ち上がり、対局室と同階にある対局者控室へと向かった。

 同30分に再開された後は終局まで戦い続けることになる。軽食でエネルギーを蓄え、横になるなどリラックスして最後の休息を取るための時間だった。

 ところが、である。対局室を出てからわずか2分40秒後、藤井は盤の前に戻った。手に持った扇子を回転させながら、一人きりの部屋で盤上を見つめている。

 同じ光景は第1局でも見られた。2日目の夕休憩となると早々と対局室に戻って考慮に沈むのだ。タイトル戦のような特別な舞台ばかりではない。順位戦など、夕食休憩のある対局での藤井は早々に食事を終え、戦いの舞台に戻って来る。習慣としてはデビューの頃から変わっていない。

 自然と、ひとつの疑問が生まれる。別に盤の前に戻らなくたって、局面について考えることなんていくらでもできるのでは、と。当たり前だが、棋士は数手先、数十手先の局面までを常に読み進めている。現局面を脳内に描く能力など、幼い頃に会得した基本中の基本である。ならば、自室で体を休めながらゆっくり考えた方がいいのではなかろうか、と。

 感想戦終了後に「なぜ早々と盤の前に戻るのでしょうか」と尋ねた。藤井は、そんなことは考えてもみなかったと語るような微笑を浮かべて「なるほど」と言った。

 「そうですね……序中盤につ…

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