第1回「お店番って?」大手書店から転身 まちの本屋で、一冊を手渡す喜び

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伊藤良渓
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 日が照る間にまちを歩くのは、久しぶりだった。

 2020年の夏。東京都内の大手書店に勤める鈴木雅代さんは、横浜・妙蓮寺の商店街にいた。

 仕事は忙しかった。このまちにそれまで7年ほど住んでいたが、「寝るために帰る場所」。どんな店があるのか、どんな人が住んでいるのか、知らなかった。コロナ禍で店舗の業務が減ったことを機に、散歩してみることにした。

 商店街で見つけたのは、妙蓮寺駅から歩いて2分ほどの「石堂書店」と、向かい合う分店の「本屋・生活綴方(つづりかた)」。自分の住むまちに書店があることに、初めて気づいた。

 石堂書店は、この地で70年以上続くオールジャンルの新刊書店。生活綴方の本棚には詩集や歌集、写真集や韓国文学などが並び、鈴木さんが勤める書店とは違う特色を持っていた。

 生活綴方を訪れ、レジに座る男性に聞いた。「ここのお店、1人でやられているんですか」。男性は「いやいや、僕はただのお店番」と笑った。「え、お店番って何ですか?」

「本屋を引き継いでほしい」

 この書店が好きな人が集まっ…

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    田中知之
    (音楽プロデューサー・選曲家)
    2023年5月28日8時50分 投稿
    【視点】

    本屋さんで思いがけなく出会ったり、何軒も探して回って手に入れた本の場合、その本を手に入れた日の温度や時間帯、本屋の場所や本棚の佇まい、買った本を入れたカバンの重さまで、いちいちちゃんと覚えていたりして、その本を手にした時に不意に思い出された

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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2023年5月28日19時11分 投稿
    【視点】

    横浜にある【生活綴方】---。 噂には聞いていて、いつか足を運んでみたいと思っている書店です。出張の合間とかにその機会をうかがっているところですが、なかなか実現できていません。いつかは必ず訪れたいと思っています。 いまちょうど『百冊で耕す

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