前世界王者の矢吹正道、子どものための大会を開催 込めた願いと配慮
ボクシングの前世界王者、矢吹正道(30)=本名・佐藤正道、緑ジム=が5月5日のこどもの日に、小中学生を対象にした「ジュニア拳闘大会」を愛知県大府市内で開く。今回が5回目で、44選手が出場する予定だ。
矢吹自身も中学1年の長女、小学4年の長男の父で、練習にも連れてくる。名古屋市の所属ジムにはキッズボクサーも多く、日頃から分け隔てなくアドバイスを送っている。
「ジュニア拳闘大会」が始まったのは2021年のこどもの日。コロナ禍で、実力を披露する場がなくなった子どもたちのために、矢吹が主催者の一人として計画した。第1回は15人が出場した。
過去4回は所属ジムで開いたが、出場希望者が増え、今回は初めて体育館を借りてプロ仕様のリングを用意する。矢吹らの思いに賛同してくれる協賛社もついた。
矢吹も弟のプロボクサー力石政法(28)とともに幼少時からボクシングに親しんだが、最初は父親に強制的にやらされ、試合に負ければ責められた。「周りを見ても、当時はそんな親が多かった」という。
一度はこの世界の頂点を極めた立場から、子供たちには「努力して勝つ喜びを味わってほしい。長い目で見て、続けてくれることが一番」と願う。
そのためにこだわっているのが「実力の近い者同士で試合を組むこと」だ。
経験の浅い子どもは、まずは同じくらいの力の選手と試合を組ませ、自信をつけさせる。実力差がありすぎると、負けた子の心を傷つけるだけでなく、けがにもつながる可能性があると考えている。
それだけに、試合の組み合わせには慎重だ。初参加の選手には1分程度の練習動画を送ってもらい、年齢、体重も考慮しながら、矢吹が全ての対戦カードを決めている。軟らかいグローブを使い、安全性にも配慮している。
矢吹は今もなお主要4団体の世界ランク上位に入り、タイトル奪還をめざしている。
現役プロボクサーがこうした大会を開くのは珍しい。「レベルにかかわらず、いい勝負をして笑顔で帰ってくれたらいいなと。毎回そう思っています」と語った。(伊藤雅哉)