中古品「ハードオフ」好調 リユース志向・物価高追い風に
中古品買い取り販売大手「ハードオフコーポレーション」(本社・新潟県新発田市)が好調だ。2023年3月期決算は売上高、純利益とも過去最高を記録。コロナ禍からの回復に加え、リユース(再利用)意識の高まりや物価高が追い風になっている。
新潟亀田インター店(新潟市中央区)には、3万点以上の中古品が所狭しと並ぶ。100円以下の雑貨から10万円を超える楽器までさまざまだ。
アウトドア用品などを目当てに10年以上通っているという新潟市の角田剛史さん(45)は「安いのが一番。宝探しのようなワクワク感もある」。阿賀野市から来た60代の女性は、着なくなった衣類の売却にも利用しているといい、「捨てるのは勇気がいる。誰かが使ってくれるならありがたい」と話した。
同社は1972年に新発田市で創業したオーディオ専門店が源流。家電量販店の進出やバブル崩壊を機に、93年に中古品事業に参入した。近年は、ネット上で売買するメルカリなどのフリーマーケットアプリの普及やコロナ禍などの逆風に見舞われるなかでも、好調な業績を維持している。
2023年3月期決算は売上高が270億円(前年比10・3%増)、純利益が16億円(同58・7%増)。純利益が過去最高となるのは7年ぶりだ。コロナ禍の巣ごもり需要から引き続き楽器やパソコンが人気なうえ、外出自粛のあおりで落ち込んだ衣類やバッグの需要も戻ってきているという。
それだけではない。背景には、ロシアのウクライナ侵攻や円安を受けた歴史的な物価高もある。
新品価格が上昇したことで生活防衛意識が強まり、少しでも安い中古品を買い求める消費者が増える一方、不用品を売ってお金に換えようとする動きも活発化。中古品市場の需要と供給双方に好影響を及ぼしているという。買い取った商品は原則としてその店舗で売る「自給自足」の方針も、物流コスト高騰の影響を最小限にとどめている。
ただ同社は、物価高による増収効果を2%前後と推定。好調の最大の要因はリユース意識の高まりとみる。SDGs(持続可能な開発目標)の考え方が広まったことに加え、7年ほど前から急速に普及したフリマアプリがリユースを一般的な生活スタイルにしたという。
フリマアプリは店舗型の業態にとって客離れの原因になったものの、逆に、アプリで中古品の売買に親しみ、店舗を利用するようになった人もいるという。アプリは個人間で直接やり取りするため、値段交渉や発送に手間がかかったり大量販売が難しかったりし、思わぬトラブルが起きることもある。一度はアプリに流れた客もまた戻ってきているといい、長橋健専務は「店舗の便利さを再評価してもらえている」と手応えを口にする。
好業績に支えられ、新規出店も続く。同社は22年度に海外2店を含む35店を出店し、現在、フランチャイズも含め国内外で931店を展開。中期経営計画では24年度末までの目標に1千店超を掲げる。長橋専務は「間違いなく達成できるだろう」と自信を見せ、「海外への出店も増やして将来的には3千店をめざしたい」と意気込む。(初見翔)