私はママ友に救われた NPOを始めた医療的ケア児の母たちの挑戦

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小林未来
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 「お母さん、あきらめたら。もうこういう子なんだよ」

 10年ほど前に言われた医者からの言葉が今も耳に残っている。

 目の前には、鼻から栄養を入れるチューブをつけた小1の息子がいた。24時間少しずつ入れていた栄養剤を消化できない状態が続いていた。

 胃にずっと栄養剤がある状態がかえって負担をかけているのではと感じ、「少し胃腸を休ませる時間をとってあげたい」と医者に相談した。そのときの言葉だった。息子のことを考えて相談したつもりが、それすら意味がないと言われたようで、悔しかった。

子育ては常に孤独

 たんの吸引や人工呼吸器の使用など日常生活で医療的なケアが必要な子ども(医療的ケア児)の子育ては、常に孤独だ。埼玉県ふじみ野市で医療的ケア児の陸さん(18)を育ててきた藤川友子さん(59)はそう実感している。

 陸さんにはミトコンドリア脳筋症という生まれつきの病気がある。赤ちゃんのころは健常児と変わらなかったが、1歳半でかかったインフルエンザを機に発症し、発達が次第にゆっくりになった。4歳でRSウイルスに感染して一時心肺停止になったことで意思疎通が難しくなり、常に介護も必要になった。

 「ママ、助けて。おうちに帰りたい」

 病院で採血のために処置室に入っていった時にしくしく泣きながら訴えていたのが、最後に聞いた息子の言葉になった。

 状態が落ち着き、陸さんが退…

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    山下剛
    (朝日新聞横浜総局次長=医療的ケア児)
    2023年6月3日11時46分 投稿
    【解説】

    冒頭に登場するエピソード。私も、医療的ケア児の長男に経管栄養をしていた当時、まったく同じことを考えていました。「持続注入」というんですが、胃腸への負担はないのか、食欲はどうなるのか、ふつう気になりますよね。 子どものおしっこを浴びたり、う

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    木村裕明
    (朝日新聞記者=企業、経済、働き方)
    2023年6月4日13時45分 投稿
    【視点】

    常時の見守りが必要で心身ともに疲弊する中で、医師からかけられた「あきらめたら」という心ない言葉が、藤川さんをどんなに追い詰めたことか。  医療的ケア児を育てる親同士の交流によって救われた藤川さんが、同じ悩みを抱える親を孤独から救い出す支え

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