「お母さん、あきらめたら。もうこういう子なんだよ」
10年ほど前に言われた医者からの言葉が今も耳に残っている。
目の前には、鼻から栄養を入れるチューブをつけた小1の息子がいた。24時間少しずつ入れていた栄養剤を消化できない状態が続いていた。
胃にずっと栄養剤がある状態がかえって負担をかけているのではと感じ、「少し胃腸を休ませる時間をとってあげたい」と医者に相談した。そのときの言葉だった。息子のことを考えて相談したつもりが、それすら意味がないと言われたようで、悔しかった。
子育ては常に孤独
たんの吸引や人工呼吸器の使用など日常生活で医療的なケアが必要な子ども(医療的ケア児)の子育ては、常に孤独だ。埼玉県ふじみ野市で医療的ケア児の陸さん(18)を育ててきた藤川友子さん(59)はそう実感している。
陸さんにはミトコンドリア脳筋症という生まれつきの病気がある。赤ちゃんのころは健常児と変わらなかったが、1歳半でかかったインフルエンザを機に発症し、発達が次第にゆっくりになった。4歳でRSウイルスに感染して一時心肺停止になったことで意思疎通が難しくなり、常に介護も必要になった。
「ママ、助けて。おうちに帰りたい」
病院で採血のために処置室に入っていった時にしくしく泣きながら訴えていたのが、最後に聞いた息子の言葉になった。
状態が落ち着き、陸さんが退…
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