離島で濃厚接触者に…保健所の理不尽な指示に困惑 磯野真穂さん連載
新型コロナウイルスを正しく恐れた人なんていたのだろうか?
社会がパニックに陥ると「正しさ」が途端に跋扈(ばっこ)する。「正しい理解」、「正しい知識」、「正しく恐れる」といった形で、混乱は「正しく」ない人々のせいで引き起こされていると言わんばかりだ。
しかし、「正しさ」を無邪気に掲げることで、見えなくなっていることも多々あるのではないか。
それを検証すべく前回は、有美島(仮名)にある小さな集落で2021年、コロナ陽性患者が初めて確認された事例を紹介し、筆をおいた。
この時の陽性者は島外から仕事で訪れていた女性である。しかし陽性判明後、大変な目に遭ったのは彼女よりもむしろ同行者たちであった。
かれらに一体何が起こったのか。前回に引き続き、筆者のフィールドワークに基づき報告したい。なお、登場する人名地名は全て仮名である。
「とにかく部屋にいてください」
コロナ陽性となった彼女以外のPCR検査結果は、全員陰性。体調も良好であった。しかし、皆が濃厚接触者と判定されたため、島民である2人は自宅、残り6人は滞在先のホテルで2週間の隔離生活を送るようにと、有美島を管轄する島外の保健所から指示が出た。
「とにかく部屋にいてください」
島の一軒家はそれなりに広さがある。また畑などのある庭付きの家がほとんどであるため、自宅での隔離生活はそれほど問題にはならない。
他方、島外からの同行者が宿泊していたホテルの部屋の大きさは4畳半ほど。これだけ狭い部屋に2週間居続けるのは監禁されているも同然である。
陽性となった女性は数日のうちに陰性が確認され、速やかに自宅に帰ることができた。それに比すると、ホテル待機となった濃厚接触者たちの2週間はあまりにも理不尽なものであった。
ホテル待機者のうち、行政・…