大きな「家」に込めた逆転の発想 観客水増しから再建のJリーグ奈良
日本スポーツの現在地 第2部①
晴れた空のもと、青いユニホーム姿の選手たちがサポーターが集うスタジアムの席に一列になる。
肩を組み、両足を交互に高く上げる。ラインダンスを踊り始め、喜びを分かちあった。
「スタジアムも良い感じになってきたなあ」
4月16日、奈良市のロートフィールド奈良。今季、J3(3部)に初挑戦する奈良クラブは、Jの舞台で初めてとなる、ホームゲームでの勝利を挙げた。
浜田満社長(47)が、そう言って笑った。
1993年に10クラブで始まったJリーグ。30周年を迎えた今季は1~3部に計60クラブが集う。新参者の奈良クは5月28日現在、J3で5勝2敗4分け。20クラブ中で4位と健闘している。
4年前から、劇的に状況は変わった。
Jリーグの下部となるJFL(日本フットボールリーグ)に所属していた2019年。J3への昇格条件を満たすため、ホームゲームの入場者数を4年にわたって水増ししていたことが発覚した。前社長は辞任。リーグ側から与えられるJ入りの前提条件、「Jリーグ百年構想クラブ」という資格も一度は失った。
存続の危機。前社長から請われ、20年に後を引き継いだのが奈良市出身の浜田社長だった。
在ベネズエラ日本大使館などに務めた後、バルセロナ(スペイン)やACミラン(イタリア)など欧州の名門のマーケティングに携わり、育成年代の遠征やキャンプを招致する会社を経営してきた。火中の栗を拾うことに近かった就任時を、前向きに振り返る。
「クラブを潰すか潰さないか…
- 【視点】
新たにJリーグの仲間入りを果たした奈良クラブの、一見地味で、実は壮大なチャレンジです。選手やスタッフの「家」であるクラブハウスを地域に開放してしまおう。解放することで地域との交流を加速させて、かつクラブが潤うビジネスモデルも構築してしまおう
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