「バッキバキの肉体」 角田夏実が世界柔道3連覇でつかんだもの
柔道の世界選手権は7日、カタール・ドーハで開幕し、女子48キロ級は角田夏実(30)=SBC湘南美容クリニック=がオール一本勝ちで3連覇を果たした。
角田と戦う相手が、決まって警戒する技がある。
ともえ投げだ。
決勝で戦ったブクリ(フランス)も腰を落とし、防御姿勢をとっていた。
それでも、お構いなし。2分37秒、角田が仰向けに沈み込んで両足を突き上げれば、ブクリの体は徐々に浮き上がる。ゆっくりと宙を舞わせ、背中から落として一本。あっさりと、世界の頂点に立った。
「まだ実感がわかない」と本人は話すが、もう間違いないだろう。女子の増地克之監督が「大きく前進した」と話すように、来年のパリ五輪代表の座はほぼ確実になった。
今大会を含め、この3年間の世界選手権は計15試合ですべて一本勝ちした。
ともえ投げと、そこから展開する寝技が得意なことは世界中が知っているが、誰も防ぐことができない。
飛び抜けた戦いを続けられる理由の一つは、純粋なパワーだ。
昨年、本格的な減量を始める前に計測した体脂肪率は女性アスリートとしては破格の9%弱だった。そこから試合本番に向けてさらに3キロほど、絞り込む。
全柔連関係者によると、試合前日の計量に角田が現れると、「バッキバキに仕上がった背中の肉体美に、他国の選手から感嘆がもれる」という。鍛え抜かれた筋肉は、階級が二つも三つも違うような技の威力につながっている。
ただ、積み重ねた実績とは裏腹に、今大会前は、「私は頼りないのかな」と漏らすことがあった。
日本代表は通常、1階級に1人だが、世界選手権は全7階級中2階級は2選手を代表として送り出せる。
日本人選手同士の実力が伯仲している階級が選ばれることが多い。
角田は52キロ級で出場した17年大会を含め、出場した4度の世界選手権はいずれも“2人代表”だった。
「外国人対策だけに集中できないし、日本の中で代表が2人だとちょっとやりづらい」
“競わされる”重圧の中でしかし、勝ち続けた。
「ようやく、自分に少し自信が持てたかな」
パリ五輪で代表は一人きりだ。
日の丸の重みを1人で背負う覚悟も、資格も、今の角田にはある。(ドーハ=塩谷耕吾)
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