離島のコロナ禍、濃厚接触者に立ちはだかった「前例」と「責任」の壁

有料記事

[PR]

新型コロナウイルスを正しく恐れた人なんていたのだろうか?

 離島での仕事中、仲間の1人がコロナ陽性となったため、濃厚接触者となってしまった6人の来島者。

 有美島(仮名)での2週間の隔離生活を保健所から指示されたが、一人一人に充てられた部屋は4畳半程度。加えて、滞在費や食費は全て自費負担して欲しいという。

 しかし、かれらには、幼い子どもがいたり、次の仕事が控えていたりなど、言われた通りの自己隔離を続けるわけにいかない事情があった。

 かれらは家に帰るべく、島の商船会社と各自交渉を開始したが、努力空しく交渉は頓挫してしまう。

 なぜかれらは船に乗ることすら許されなかったのか。

「責任を取ってくれるんですか」

 交渉経緯は次のようである。

 まず自宅に帰りたい本人と商船会社がやりとりをし、次のような約束を交わした。

 ・接触を避けるため切符は買わず、下船後に振り込む。あるいは港に迎えにくる家族が下船時に支払う。

 ・客室には入らず、ひとり離れた場所にいる。

 ・乗船・下船は最後にする。

 保健所もこれらの条件にいったんは同意したため、帰宅はようやくかなうようにみえた。

 しかしその後、商船会社と保健所の間で再度やりとりがあり、この決定は覆されてしまう。

 なぜなら保健所が商船会社に「乗船した濃厚接触者があとから陽性とわかったら、そちらのほうで責任を取ってくれるのか」という要求を突きつけたからだ。

 「陽性者が出た場合の責任の取り方」というのが、どのようなものかがそもそも不明であるが、責任を取れるはずのない商船側は、やむなく乗船自体を断るよりほかなくなってしまった。

濃厚接触者の証明発行までまる2日

 保健所とのやり取りでもう一つ難航したのが、濃厚接触者であることを示す証明書の発行である。隔離生活を送る1人に仕事のスケジュールを組み直す必要が生じたため、証明書が必要となったのだ。

 ところが、証明書発行を保健…

この記事は有料記事です。残り1956文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

Re:Ron

Re:Ron

対話を通じて「論」を深め合う。論考やインタビューなど様々な言葉を通して世界を広げる。そんな場をRe:Ronはめざします。[もっと見る]

連載コロナ禍と出会い直す 磯野真穂の人類学ノート

この連載の一覧を見る