使用済みおむつ入りの袋を顔に…熊本乳児院で虐待認定 再び改善勧告

森北喜久馬 大貫聡子
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 心理的虐待があったとして改善勧告が1年前に出ていた熊本乳児院熊本市中央区)で新たな身体的虐待や不適切行為が明らかになった。その数、計33件。古くは2008年までさかのぼり、前回の改善勧告後も18件が起きていた。

 設置法人である熊本市社会福祉協会に対し、市は8日付で児童福祉法に基づく2度目の改善勧告を出し、翌9日、記者会見で調査結果の詳細を明らかにした。

 「子どもが虐待されているのではないか」という昨冬から今年初めにかけての複数の匿名の情報提供が再調査のきっかけだった。市こども局は、乳児院の運営に携わったことがある57人から話を聞いた。うち1人は退職者だった。立ち入り調査で日誌や監視カメラの映像も入手して裏付けを進めた。

 その結果、08年から今年3月の15年間に、身体的虐待5件、心理的虐待4件、不適切行為24件があったと認定した。

ひじの脱臼、認定されず

 主な事例は表の通り。これ以外では、ひじの脱臼が6件確認されたが、市は虐待や不適切行為とは認定しなかった。複数の職員が子どもを引きずったり、手首をつかんで持ち上げたりしたことを認めたものの、直接の原因かどうかは詰め切れなかったからだという。

 昨年3月の改善勧告以降でも、身体的虐待と心理的虐待が各1件、不適切行為が16件起きていた。こども局の担当者は「けがをさせようとか、いじめようとか、悪意をもってやったとは思えない」としつつ、「忙しさにかまけて、同僚のいないところでやってしまった」とみる。

 乳児院のスタッフの数は基準に適合しているが、質の点では問題が大きいとみて、市は市社会福祉協会に対して1カ月以内に改善のための実施報告を求めた。

 協会の代理人弁護士は取材に対し「心配とご迷惑をおかけしたことをおわびしたい。改善勧告を真摯(しんし)に受け止め、一層の改善に取り組む。(市から求められている報告書は)具体的な改善策を理事会で議論し、とりまとめる」と話した。(森北喜久馬、大貫聡子)

■熊本市が「問題あり」と認定した主な事例■

《身体的虐待》

・何度注意しても同じことをする子にバチンと頭をたたいた

・食事を食べようとしない子の頭や手をたたいた

・不適切な行動をした子に「メッ」という感じでほおをつねった

・子どもが引き戸にもたれて座っていた際に、引き戸を開け、後ろから足で押した。その子は前方に数十センチ滑って動いた

《心理的虐待》

・使用済みのおむつが入った袋を子の顔に近づけた

・寝付かずに泣き出した子に「あー、怒った」「もう、よかよ」と言って隣室に布団ごと連れて行った。泣き続けた子を隣室に残し引き戸を閉めた

・不適切な行動をした子をにらむなど、感情のままに怒りや嫌悪を表情に出した

《不適切行為》

・一緒に遊んでいた子の目元や耳、鼻に、2~3センチに切ったセロハンテープを目や鼻をつり上げるように貼った。子どもは泣かずに笑っていた。はがした後、傷やテープ跡は見られなかった

・おしゃぶりが口から外れると泣く子に、おしゃぶりとほおをつぐように医療用テープを貼って固定した。貼った肌には、赤く跡が残った

・子ども同士が押し合ったり、物を投げたりしたので注意する際に、尻もちをつくほど体を押した

・前方を歩く子どもの後頭部に手があたり、その勢いで倒れ「わーん」と泣き出した。その子に近づくこともなく、「わざとじゃないでしょ」と発言した

・動かしたい場面で、手首や腕、足をつかんで引っ張って動かした

・ぐずって食べないとき、「もういい」「食べないなら食べなくていい」「食べないなら下げるよ」と言って、食事を下げた

・50センチほどの柵を越えて移動させる際、子どもの手首や腕を持って持ち上げた

・昼の寝かしつけの際、眠らずに立ち上がった子の洋服をつかんで引き寄せた

・寝かしつける際、子どもを布団やベビーベッドにドンと置いた

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